ケータイよしもとで連載していた人気コラム、『ゆにばーす川瀬名人の認定戯言』がラフマガで復活しました。
川瀬名人の「戯言」にお付き合いください。

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【新連載!】『ユニバス』【ゆにばーす川瀬名人の認定戯言#1】

タイトル『無敵マン』

インポッシブルさんのネタのことではない。

最近トランプ大統領がとにかくアタマに来ているらしい。

別にトランプさんの毛量について話しているわけではない。

コロナについて、アメリカと中国の間で色々と起きている論争のことだ。

様々な説があるが、芸歴10年の若手芸人は勿論確認する術を持たない。

なにより、我々一般庶民からするとこういった国同士の争いが何故起きてしまうのか、理解し難い部分がある。

ただ一つ言えるのは、テクノロジーはこういった国同士の争いの中で進化していったことだけは確か、ということである。

それは例えば、核ミサイル開発で培われた技術がふだんの生活で原子力発電所に反映され、ミサイルの発射システムで培われた衛星の技術が天気予報や地図にも反映される。そして現在、これらの化学と科学の進化を著しいものにしているスーパーコンピューター、AIの開発が各国の急務とされている。

コロナのワクチン開発なんかもこのAIの性能それ次第で一気に世界のイニシアチブを握れるかも知れない。

が、こうした争いの中で進化し続けるテクノロジーは限界を知らない。相手を上回っても更にそれを上回るものを相手に作られ更に相手より上回るものを……

そして、SFなどではよくある、
シンギュラリティ、
いわゆる技術的特異点を迎えAIは自我を持ち人間が滅ぶ。

ただ、川瀬はこういった世界の行く末に関して

小学生の頃にもう既に気付いていたのである。

川瀬が小学生の頃、大流行とまではいかないまでも密かなブームになったものがあった。

ドラクエバトル鉛筆である。

鉛筆全体にドラゴンクエストのモンスターが描かれており
今ではほとんど見ない六角形の鉛筆の一面ごとにそのモンスターに応じたコマンドが書かれている。

各モンスターは全てHP100。

コマンドの例として
【全員に20のダメージ】
【一匹に50のダメージ】
【HP30回復】
など様々なものがあった。

最初は楽しく遊ばれていたバトル鉛筆もやがて勝ったものが負けたものの鉛筆を奪えるという敗者が立ち直ることの難しいギャンブル要素が生まれ、そこから喧嘩になったり虐められる奴も現れ、学校はバトル鉛筆持参が禁止になった。

しかしそこで川瀬は考えた。

これ別に、鉛筆である必要なくね???

革命的であった。

川瀬が考えたのはサイコロゲーム。

各々が紙に自由に絵を描き1〜6の数字を書いて、そこに自分の考えたコマンドを書き込めばいい。

例えばその時書いていたモンスターを相方に置き換えると

【はら】HP100

1、イエーーーイ!!全員に30のダメージ
2、イエーイ!!全員に20のダメージ
3、ウンコ食べるHP30回復
4、野糞する1回休み
5、イエーーーーーイ!!全員に40のダメージ
6、野糞する1回休み

これで完成である。

あとは持参したサイコロを使い戦うのみ。

金もかからない
負けてもとられることもない
暴力も虐めも生まれない

シリコンバレーで開発されたかのような新時代の校内娯楽の誕生は学校に一大センセーショナルを巻き起こした。

みんなこのサイコロゲーム専用のノートを持ち
みんな各々キャラクターを描いたり考えたり
絵が苦手だったり考えられない奴は既存のキャラのシールを貼ったり
1日に10匹、キャラクターを考えることをノルマ化する強者まで現れた。
平和で楽しくクリエイティブな休み時間は続いた。

ある時、川瀬はふと気付いた。

あれ???なんかおかしい。

何かがおかしい。

がその何かがわからない。

もう一度自分のモンスターを見てみよう。

【はら】HP100000000
1、イエーーーイ!!全員に30000000のダメージ
2、イエーイ!!全員に20000000のダメージ
3、ウンコ食べるHP30000000回復
4、野糞する35回休み
5、イエーーーーーイ!!全員に400000000のダメージ
6、野糞する45回休み

本当に何がおかしいのか当時はわからなかった。

ダメージが
インフレを起こしている!!!!

ドラクエの鉛筆の様に既存の商品ではなく自分でダメージまで考えられてしまうこのサイコロゲーム

自由という名の旗印をもとに
ゲームにおいて1番大事なゲームバランスというものを考えていなかったのである。
しかもこれはたった一ヶ月で起きてる。

ドラゴンボールも真っ青の戦闘力の急上昇である。

しかしながら最早サイコロゲームは製作者の手を離れ、手のつけられない、まさにそれ自体がモンスターとなっていった。

止まることのないダメージインフレ。
ゼロをいくつ書くかの勝負になってしまっている。

そんな中、インフレの更に上をいく進化をサイコロゲームは見せた。

製作者の及びもつかぬ革新的な強さのベクトル。

そのベクトルを「はら」に反映させたものを見てみよう。

【はら】HP1956434572143
1、イエーーーイ!!全員に30000000000000のダメージ もう30回サイコロを振る
2、イエーイ!!全員に200000000000000のダメージ もう40回サイコロを振る
3、ウンコ食べるHP3000000000000回復 100回死んでもよみがえる体になる
4、野糞なげる 絶対死ぬ
5、イエーーーーーイ!!次のターンから1000000回攻撃
6、野糞なげる 絶対死ぬ

もう、はらさんの原型は留めていない。

殺戮マシーンへと変わり果てたはらさんの姿。

色々と特筆するべきところはあるが……

HPを1の位まで細かく設定することでダメージ計算を難しくして最悪ごまかそうという小学生にあるまじき悪知恵。

永遠に俺のターン攻撃。

「絶対」に小学生らしさが滲み出る最強の即死技。

自動復活という半ゾンビ的かつ斬新な要素。

完全なるシンギュラリティである。

もう製作者のできることはそれらが破滅へ向かうのをただ眺めるのみ。

しかしそんな時、そんな技術的臨界点をも突破する、最強のキャラクターが現れた。

クラスメイトのおっくん、こと奥野くん12歳の考えたキャラクターである。
【無敵マン】HP1(その代わり絶対先制攻撃)

1〜6、無敵バリア 100ターンありとあらゆる攻撃を跳ね返す。

以上。

シンジラレヘン!!

間違えた!

シンギュラリティ!!

ダメージインフレ時代に終止符を打つ、
スーパーフルカウンタースタイル!

キャラクター造形と1〜6という全体的に奥野くんの雑さが滲み出るこの無敵マンは
これまで生徒たちが積み上げてきた様々な極悪非道の攻撃方法全てを否定かつ肯定、
対戦相手は自分達の考えてきた攻撃の前に駆逐される仕組みとなっている。

奥野くん自身は、公園のブランコで立ち漕ぎしすぎて足の骨を折るような愛すべき愚か者だったのだが、そのピュアさ故に正でも邪でもない最強の存在を生み出した。

そしてこの無敵マンに対抗して

絶対無敵バリア破る光線

絶対先制攻撃するマン

など様々な、対無敵マンシリーズが量産されたと同時に無敵マンありきになったこのサイコロゲームは最早無敵マンを倒すゲームへと成り果てていた。

そしていつしかこのゲームをもう誰もやることはなかった。

このコロナを巡る論争を、そして、いずれやってくる技術的特異点、シンギュラリティを突破するような最強キャラクター、無敵マンは現れるのだろうか。

そもそも現れた方がいいのか。

現れない方がいいのか。

コロナが終息してほしいのはやまやまだが、
そこから先は川瀬でもわからない。

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