NSC(吉本総合芸能学院)の講師として活躍する構成作家・大工富明。ナインティナインが在籍していた9期から30年間教鞭をとり、多くの芸人たちを指導しています。

そんな大工による、漫才の“基本のキ”が詰まった『ラフノート – 漫才の作り方入門 -』(ヨシモトブックス)が3月6日(金)に発売されました。

今回は、この1冊に込めた想いをインタビュー。お笑いで大事なポイントやNSCでの授業の様子など、普段知ることのできない内容をたっぷりと聞きました。

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楽しくないと子どもは見向きもしない

――本著は小学校高学年向けに作成されていますが、大人でも楽しめる内容だと思います。マンガ、コラム、ドリルという構成がとてもわかりやすいですね。

子どもの時に、手塚治虫さんや藤子・F・不二雄さんが“マンガの描き方入門”を出してはったんですよね。それがきっかけで漫画を描くようになったり、プロになった人も多いと思うんです。

手塚治虫さんほどの人でも、“マンガのすそ野を広げたい”と子どもに向けて行動されたのがすごいな、と思いまして。僕も“お笑いを広く知ってほしい”という気持ちは同じで、書くなら子どもに向けた本がいいと思いました。

NSCのジュニアコースで教えていることも大きいです。やっぱりね、子どもは面白くなかったら本当に見向きもしない、無残なほどに(笑)。授業は75分ですが、僕が一方的に言って覚えさせても全然乗ってこないので、自分で考えさせるのが大切なんですよね。

――ドリルには具体的なお題が出ています。これは実際に授業で使っているのでしょうか。

例えば“おとぎ話でボケましょう”もそうですね。実際に3つボケを作ってもらって、発表してもらいます。そして「こうしたほうがいいよ」「こっちはアカンかったね」とかのアドバイスをして、良いところは褒めて……というプロセスで、漫才を覚えていけるようにしています。

NSCは彼らが自由に作ってきたネタを、授業でアドバイスするのが基本です。でも“もっと時間があれば基本中の基本、笑いのコツを最初に勉強させてあげられるのに。そうすればこんな失敗せえへんのになあ……”と思うことも何度もあって。みんなぶっつけ本番でやってますから。

最初のうちは「違うんやで、それは」と言いつつ、僕自身何が違うのかが理論的に言えなかった。毎年“どう違うかをどう説明しようか”と繰り返して考えて、“こういうことか”というのを少しずつ拾ってまとめていました。

笑いの方程式の基本は「共感」

――本書の中で、一番のポイントはどこでしょう?

お笑いのポイントは“共感”と“予想を裏切る”、この2つなんです。特に“共感”は大切。人は、知らないことを笑えないですから。中川家がすごくウケるのはその最たる例ですよね。

特に日本は、家庭や学校ネタがよくウケます。アニメなら『ちびまる子ちゃん』や『サザエさん』もそうですよね。「みんなが共感できるスペースで面白いことを探すといいよ」と子どもたちにも教えています。

――マンガに登場する知恵子ちゃんのように、漫才に興味があっても、恥ずかしがる子もいると思います。そういう子がこれを読んで、漫才をするきっかけになるかもしれませんね。

『こどもグランド花月』というのを年に何回かやってるんですけど、オーディションを受けにくる子の中にも恥ずかしがり屋の子がいます。でもワークに参加すると、すごく嬉しそうに漫才をするんですよね。

――思わぬポテンシャルを発揮したり。

そうそう! 実は恥ずかしがり屋の子を練習させる魔法の言葉がありまして。「(手を叩いて)はいどうもー!」と言うんです。僕がこれをやったら、どんな照れ屋も、つられて「どうもー!」とやり出すんですよ。条件反射で“漫才始めなあかん”となるみたいで(笑)。漫才のDNAみたいなものがあるんかな? 魔法の言葉ですよね。

お笑いの基本を再確認できた

――1冊にまとめる上で、特に難しかった点はどこでしょう?

説明したいことは、たくさんあるんです。でも説明を増やすと難しくなる。対象が子どもですから、絶対内容は分かりやすくしないといけないし。基本中の基本だけに絞り込むため、捨てた材料は山ほどあります。

ただ、逆に見たら、入りきれへんもんは、なくてもいける部分やと思っています。子ども向けにしたことで、“ああ、漫才の基本はこれなんや”と自分でも再認識できたところはありますね。

――削ぎ落とされて、大切なものだけが残っていったと。

そうですね。公式というか、“小学校でいう算数を作らなあかん。数学を作ったらあかん”と。“サイン、コサイン、ルートはダメなんや。分数くらいまででええんや”という気持ちで削ぎ落としていきました。

――NSCで長年教えている中で、お笑いについて、時代の変化は感じますか?

“どこまで進化すんねん”というくらい進化してますね。ここ100年の人類の進化ってスゴイでしょ。1年で100年分くらいの進化してるんちゃいますか? お笑いも一緒でクオリティがすごく上がってます。ただ、やっぱり基本は一緒。始まりは、先生のモノマネや目の前の人の共感を得ることだと思います。

この本が、その“始まり”になれば嬉しいですね。コラムとワークを読むだけでも、笑いってこうできてるんや、ということがわかると思うんです。だから今「NSCに行こうか」と思っている人たちには、最初に読んでほしいなあ。

繰り返しになりますけど、僕がやらなあかんのは、すそ野を広げる伝道師的な役割やと思っています。そうして30年間、吉本というお笑いの場でやってきた恩返しをしたいですね。

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『ラフノート – 漫才の作り方入門 -』

定価:本体1,500 円+税
発行:ヨシモトブックス
発売:ワニブックス

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<入学資格>
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一次選考:書類選考 二次選考:グループ面接

<受付期間>
第5次募集締切:2020年 4月末日必着
詳細は公式サイトをご確認ください。

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