ケータイよしもとで連載していた人気コラム、『ゆにばーす川瀬名人の認定戯言』がラフマガで復活しました。
川瀬名人の「戯言」にお付き合いください。

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【新連載!】『ユニバス』【ゆにばーす川瀬名人の認定戯言#1】

タイトル『それでも占いは信じない』

 

僕は占いが嫌いである。

占いとは、内面の心つまり人の裏、更には「綯(うらなう)う」という動詞が語源で、この「綯(うらなう)う」という動詞の意味は、手で藁を束にして捻っていくという意味、つまり二つの言葉の意味を合わせるとバラバラの心を合わせて心を集中させ神様と交信するというのが元々の意味

とかはマジでどうでもいい。

まず最初に占ってもらったのは大学生の時、元カノに連れていかれたネットで有名だった前世占いであった。

元カノは、有名な武家の娘という結果になり、最初は嫌々だった僕も不覚にも興味が出てしまい、なけなしの5000円を払って自分も見てもらった。

すると英単語カードを留めておく輪っかくらいデカいピアスをぶら下げたオバちゃんは僕の顔を見つめ

「あなたの前世は、、」

おもむろに溜めて数秒後こう言った。

「焼うどん、だね。」

占いを嫌いになるには十分な結果だったと思う。

あれから15年以上は経つが元カノが椅子から転げ落ちるほど笑っていたのを鮮明に覚えている。そこからデートで焼うどんを頼むことで共喰い扱いされたことは言うまでもない。

しかもこれだけではない。

コンビ結成して間もない頃にライセンスさんのラジオ収録にゲストで呼ばれた。

二部構成で前半が僕ら、後半が有名な占い師となっており、前半出番の僕らは次のライブへの飛び出しのため自分達の収録が終わるとスタジオを後にした。

後日、劇場でライセンスの井本さんが無茶苦茶にニヤつきながら話しかけてきた。

「川瀬、最悪やけど最高の話聞く?」

なんという悪魔的な誘い水や。

恐る恐る聞き返す。

「なんですか?」

「こないだのラジオな、収録全部終わった後、占い師の人にお前が売れるかを占ってもらってん、結果なんて出たと思う?」

 

僕の、なんて出たんですかを待たずに井本さんはこう言った。

「お前、2年以内に自殺するらしいで。」

え?なんで売れるかどうかという質問の返しがそれなの?あと2年以内ってなんというあやふやな。

井本さんに更にこう言われた。

「いやこれ収録後に興味本位で聞いたから占いの人もボケとかじゃなくガチやってん。お前、多分前世で相当に業が深かったんやろうな、顔にでとるわ、ガハハハハハハ!」

前世焼うどんでどうやって業が深くなるんや。

焦げすぎた、とかしか思いつかんぞ。

逆に焼うどんでの徳の積み方もわからんが。

 

そもそもあれから5年以上経過しており僕は生きてる。どうせそれを責めても、運勢の流れが変わったとか言うのだろう。なんなら2年以内に自殺すると伝えたからこそ、そうならない為に頑張れたんだ!くらい言うてくる可能性すらある。そうなると僕は自殺ではなくそいつの他殺を考えるかもしれない。

 

嫌いになった理由は以上である。

 

そして最近、ルミネのロビーで占い芸人をやっている舛方さんという先輩が

「川瀬、今年のM-1そろそろ占っとくか?」

とかぬかすのでこの旨を説明した。

 

「なるほどな、それは川瀬、本物にあったことがないからそうなるんだ。例えば、トマトが嫌いな人も大体給食のプチトマトが不味くてその余韻でトマトが嫌いなんだ。最初に食べた給食のプチトマトがめちゃくちゃ美味いやつならトマトを好きになってるはずなんだよ。だから俺がめちゃくちゃいい占い師のとこ連れてってやるよ。」

 

トマトトマトうるせえなあ。

ただ、トマト舛方曰く、そこはそんじょそこらの占い師とは違うらしく、何でも普通の方法で会える人ではないらしい。

 

というのもまずどこにも情報が出ていないこと。

ネットは愚か、電話番号すらわからない、完全に人から人への口コミでしかその占い師のことを知り得ないのである。

更にこういった占いや御利益系の話しは芸人界隈で数多も耳にするし、芸人は噂話が笑いをとることよりも好きなのですぐ広まるものなのだが聞いたこともない。

 

2019年M-1準々決勝で負けた後、色々自分なりに考えてまた2020年の戦いに臨むわけだが、この考えている方法が正しいのか間違っているのか、いや迷ったところで意味はない、結局人生は決断なんだ、熟慮した上で自分が出した結論に自信を持って邁進するべきで人のアドバイスなど本当に僕のことを考えて言ってくれてるのか怪しいし、まして占いなんて更に責任感という点において…

 

行くことにした。

人は不安になった時、宗教にハマりやすい。

浪人中、受験勉強ではなくお遍路さんに行った友人を僕は知っている。

 

なんでも千葉県の奥地にあるらしく電車では厳しいのでトマトさんの車で向かった。

道中トマトさんが言うには、占いには大きく分けて統計学系と直感系があるらしく、統計学は大変だが努力すれば学べるものらしい。ゲッターズさんとか島田秀平さんは統計学系のすごい人。逆に直感系はもう才能でしかないらしい。超能力というか逆にいうとどうも胡散臭い面もある。

今から会う占い師はその両方をやっている人らしく、こんな人がまずいないらしい。統計学系の占いを学ぼうとすると直感系の人はお断りらしく、理由は統計がブレるからだと。

M-1とキングオブコント両方決勝行った芸人みたいなことだなとトマトさんはほざいていたがちょっと違うと思う。

ただ並大抵の占い師ではないということだけはわかった。

 

着いたところはどんだけ山奥かと思えば閑静な住宅街。田舎ではあるが日本にこの風景は腐るほどあるだろう。その住宅街の、中の上くらいの家の前に車は止まった。

 

ノリ的に結婚して子供できて今は幸せにやってますみたいな芸人の家である。トマトが何故かビビったろ、こんなとこにいるんだぜみたいな顔したことはグッと堪えて家の中に入るとその占い師が出迎えてくれた。

 

「あ、お待ちしてました、舛方さんですね、中へどうぞ〜。」

 

度肝を抜かれた。相席スタートのケイさんだった。

いや、ちがう、本物よりは痩せてんのか?なんなんや、似過ぎている。ただ、なんや、この漂うオーラは。ケイさんが放つちょっとエロいオーラとは違う、これを神秘的と呼ぶのか。

 

奥の和室に通されたがこの和室も特に変わったところはない。少し大きめの机と座布団、そして可愛らしい加湿器がBGMのように軽く唸っている。

普通や、あまりに普通すぎる。行ったことはないけどケイさんの実家に来たかのようや。

 

「じゃ、始めて行きますね〜、あ!待って待って待って!」

 

速攻を仕掛けてきた側からの静止に戸惑うトマトと川瀬。

え、、?なに?

 

「メガネの方の人、今おじいちゃん降りてきてるよ、不安になるな、才能あるんやからって言ってるよ?」

 

ちょっと速攻かつ一斉同時多発的に物事が起きたので一度処理したいと思う。

まず僕の方に守護霊かなんなのかわからないが祖父の霊が降りてきている。まずこの時点でイカつい。何で僕の祖父が死んでいるとわかったのか?かつこう見えて化粧水を毎晩塗っているので見た目は若い、祖父が死んでいると断定出来るような年齢ではない。

更に、「不安になるな、才能あるんやから」と祖父の言葉を代弁してる部分。不安になっていることを見抜かれたのはまぁ占いに来るくらいだからそんな奴も多かろうが、何故関西弁だとわかった?僕はまだこの痩せケイさんの前で標準語の挨拶しかしていないし無論パーソナル情報はまだ何も開示していない。

あと、祖父よ、何故に今降りてきたんや?タイミングまじよくわからんくないか?

 

だがとりあえず初っ端で度肝ぬかれたのは間違いなかった。

寄席のプラスマイナス兼光さんのフリーザのモノマネくらい、掴みとしてはこれ以上ないといった出だしであった。

 

そして痩せケイさんは続ける。

「もうね、今日は私いいことしか言わないけど、それは気を使ってるとかじゃなくていいことしか言えないの。ここに来れてる時点でもう運がある人だから。ここに来れてるってことはもう今から視ていきますけど、いいことしか見えないと思う。だから気楽にね、聞いてください。」

 

掴みからの導入が完璧すぎる。来てる人の不安を一気に払拭した。フリーザのモノマネから巨人師匠のモノマネへ自然に移行する完璧な流れや。

 

名前と生年月日と出身地を聞かれ

 

「じゃあ、視ますね。」

 

実に無駄がない。掴みもそこそこにすぐにネタに入った。

 

と思ったら何やら首に巻いてる長めのストールを空中でふわふわさせながら弧を描いて振り回しまくった。その時、僕は気づいた。首に長めのストールってケイさんも巻いてなかった?だから余計似てる気がしたのかとか考えていると

 

「あれ?出身本当に大阪?結構東の端っこの方?」

 

たまげた。これは僕のミスなのだが本当の出身は奈良である。テレビのオーディションやアンケートなどで出身地を書く時、奈良に住んでいた時期も短く奈良で話しできることが大仏と鹿しかないので長年住んでいた大阪と書く癖があり今日もそう書いてしまっていた。試したわけではないが一瞬で見抜かれ何故かしどろもどろになって説明する羽目になった。

しかも奈良で住んでいた場所も大阪まで1キロ程度、超県境といった場所である。そこまで視えるものなのか?

 

「なるほど、だよね。というか結構日本文学とか好きなんじゃない?大学も文学部とかじゃない?」

 

え?まじで?なんとなく文系とかじゃなくて近畿大学文芸学部日本文学科をほぼピンポイントで当てて来やがったぞ。本ネタに入ったらクリティカルボケの連打で全く息をつく間もない。

 

「あとね、今目指してる、なんの大会かな、そこまでわかないけどかなり難しいよ。」

参りました。

その最後一言で僕の占い嫌いは完全に覆され堰を切ったように今自分が持っている悩みを全部相談した。横のトマトのドヤ顔を尻目にこれから一年どのように取り組んでいったらいいのかなどを聞いた。

 

「メモとりなさい。あなためちゃくちゃ忘れっぽいから。思いついたアイデアとかだいぶ無くしちゃってる。そっからイイもの生まれます。」

 

なんという心地の良い断言。そうです、そうなんです。単独ライブのグループラインも自分で作ったこと忘れて4回も作ってしまったり同じ後輩に帰り道に3回も「最寄りどこなん?」って聞いて引かれたことなど自分でも怖いくらい忘れるんです。

 

「あとね、今は本読んでないでしょ?もっと読みなさい。インプットしきったと思って油断してる。空っぽになってるから。それでもっとあなたの文学的な面とか哲学的な面で相方と議論して云々カンヌンみたいなネタがいいんじゃないかな。」

 

え?ネタの具体的なアドバイスくれるの?しかもお笑い関係者のアドバイスよりよほど具体的。具体的過ぎてネタバレになりかねないのでちょっともうここで書けないレベルですやん。横のドヤ顔トマトはもはや自分が占ったかのような顔をしている。

 

しかしトマトの言っていたことは確かに本当だった。世の中には本物がいる。この人に最初にあったら占いというものを信じていたしなんなら何周もして芸人ではなく宗教家をやっていたかもしれない。いやなんなら帰りに美輪明宏さんの本を買うかもしれない。いや、というかこの人に座付き作家になってもらおうか。スーパースピリチュアル漫才でM-1を制するのや。

 

「あとね、これ最後のアドバイスなんだけど、相方のね、おにぎりみたいな男性とはちゃんと仲良くやること、これ一番大事。」

おにぎりみたいな男性。

あの肩より下まで伸びる髪から外に広がるスカートの形を一辺とした場合、おにぎりの形といえなくもないが

ただ

おにぎりみたいな

男性。

 

占い師が悪いのか?はらさんのヴィジュアルが悪いのか?

その後30分マシンガンのように喋った後、更に占い師はこう言った。

「これは私が喋ってるっていうよりは今、神様の言葉を代弁してるから、私はあくまでその事実を伝えてるだけ、逆にいうと本当のことしかいってないの。今日は言えるのはこれくらいかな。」

お布施でもないが感謝料としてお金を納めてトマトと帰路につく。車中、トマトはこう応援してくれた。

「川瀬、絶対M-1いけるぞ!だって、はらちゃんは神様をも欺ける女なんだから!」

占いはこれからも信じないが一度でいい。

はらさんホンマに金玉ついてないか確認したい。

 

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