関西のテレビ、ラジオや大阪・なんばグランド花月の舞台を中心に活躍している漫才コンビ、まるむし商店の磯部公彦が、国連で採択されたSDGs=『Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)』をテーマにしたクレイアニメを制作! このたび全17作のうち、1作目『貧困をなくそう』、2作目『飢餓をゼロに』が公開されました。

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン
クレイアニメとは、粘土作品を“パラパラ漫画”のように動かして動画にしたもの。磯部は10年以上にわたってクレイアニメの制作を続けており、動画はiPhoneで撮影しているとのこと。YouTubeチャンネル『よしもと大阪芸人チャンネル』にはその作品の数々がアップされています。
■『よしもと大阪芸人チャンネル』はコチラ!
2030年までに、すべての人が平等な機会を持ち、地球環境を壊さず、よりよい生活を送ることができる世界をつくるための17のアプローチを、オリジナルのストーリーと粘土アートで表現していく本プロジェクト。
今回、磯部にインタビューを実施し、クレイアニメの魅力や作品に込めた思いなどを聞いてきました。
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ただ好きやから作ってきただけ

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン
──いつごろからクレイアニメを作り始めたんですか?
10年ぐらい前から、動画を作るソフトを買ってちょこちょこ作っていて……で、「こんなことやってるねん」って言ったら、スタッフからクレイアニメの専門家の方を紹介してもらったりして、いっぺんとりあえずワークショップみたいなことをしてみましょうか、という話になったんです。それが3年半ぐらい前かな?
その時は数人しか集まらなかったんですけど、1回やってだいたいノウハウがわかったので、どんどんワークショップをやるようになり、人も来てくださるようになり……いろんなことが加速度的に進んでいった、という感じです。
──もともとモノづくりがお好きだったんですよね。
昔から、細かい手作業が好きなんですよ。子どものころ、日本橋で部品を買ってラジオを組み立てたこともありますし……釣りが好きでルアーを自作するうちに、木工の作品が『ハンズ大賞(“手作り作品”を評価する賞)』で入選したり。
そんな時、ふと売場に並んでいた粘土が目に入って、それで自分とこのネコや家族を作ったりしてるうちに、“動かしてみよう”となったわけです。“これで人気者になろう”という気持ちは全くなくて、ただ好きやから作ってきただけ。釣りも、好きやからやってるうちに番組を持つようになりましたけど、それと同じですね。
──どんな粘土を使って作っているんですか?
クレイアニメ用の粘土もあるんですけど、発色が悪くて、固まらないんです。僕は固まるタイプの白い粘土で作って、それに自分で色を塗ってます。作って、乾かして、色付けするわけですから、とにかく時間がすごくかかる。しかも凝り性やから、どんどんのめり込んでしまって……。“あんな平たい粘土がこんなモノに変わる!”っていうのがすごく面白いんですよね。
クレイアニメの魅力は「1人でやれること」!?
──磯部さんにとって、クレイアニメの魅力とは?
釣りもそうなんですけど、1人でやれるってことやと思います。2人以上になると、妥協せなあかんことが出てくるでしょ? それは漫才で懲りてるんでね(笑)。
あと、いつも舞台に上がっていて、特にベテランになってくると、会う人が決まってきて発想も偏ってくるんですよね。だから、釣りやボルダリング、スポーツクラブに行って、“普段使ってない筋肉を使ったらおもろいこと言えるんちゃうかな”と(笑)。それと同じで、クレイアニメも“普段使ってない脳を使ったらどうなるんかな”ということを意識して発想しています。

出典: 『飢餓をゼロに』
──今回、SDGsをテーマに制作することになったきっかけは?
去年の春に、いろんな趣味を持っている吉本芸人を紹介するテレビ番組があって、僕が特集されたんです。それを見ていた社員から声がかかって、作ることになりました。
──今までの作品づくりとの違いはありますか?
SDGsはテーマがちゃんとあって、ゴールが見えてるでしょう? そこに向かって走るので、そういう意味では作りやすいですね。
ただ、地域であったり人々であったりを限定して作らないように気をつけています。はっきりどこどこの国の……となるのは違うかな、と。ちょっとぼやかして作っている分、難しさもある。あんまり、ふざけられへんしね(笑)。
1秒作るのに1日かかっている

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン
──1本仕上げるのに、どれぐらい時間がかかるんですか?
1分ぐらいの作品やったら2、3週間あればできると思いますよ。でも僕の場合は、劇場に出たり、いろいろ他のことをやっていると、何もできない日もあって。今、編集中の3作目は83秒の作品なんですけど、2か月半かかりました。計算すると、1秒作るのに1日かかっている。全部で17個あるので、もっとペースを上げていかなあかんのですけど、「ここまででいい」っていうのがないから……。
とはいえ、専門家と競争しても勝てるわけがない。クレイアニメはコマ撮りなので、たとえば鳥が飛んでいるシーンなら、上から吊ったり下から棒で支えて動かすんですけど、専門家は糸や棒を後からパソコンで消していくんですよ。僕はそこまでできへん。専門家なら1秒間に12コマから24コマぐらい撮影してなめらかに動かすところも、僕の場合は1秒5コマでカタカタカタ……と動く感じ。あくまで“ヘタウマ”です。
──本当に気の遠くなるような作業ですね。
最近は老眼になってきてるので、細かい作業は老眼鏡とメガネ型ルーペをダブルでかけるんですよ。そうすると“すごく大きなモノができた”と思ってたのが、メガネを外して見たらすごく小さかった、とか(笑)。
1作目に出てくるハンバーガーなんて、1cmないからね。葡萄の粒は2mmぐらい。めっちゃちっさいんです。大きく作ってしまうと、机の上でiPhoneを使って撮る時、画角に収まらないからなんですけど……やっぱり、肩はごっつ凝ります(笑)。
背景も、自分で写真を撮ってきて使ってるんですよ。マンションの壁面タイルをアップで撮影してお城の壁に見立てたり、よく晴れた日の空を撮って使ったり。
iPhoneをがっちり固定するのも大変やから、いくつかの器具を組み合わせて……気づいたら道具がどんどん増えてますわ(笑)。
“なんじゃこりゃ”と思ってもらえればそれでいい

出典: 『貧困をなくそう』
──バックに流れる音楽も印象的ですね。
むぎ(猫)(むぎかっこねこ)さんという沖縄在住のアーティストの方が、今回の作品に賛同して音を作ってくださることになりました。出来上がった作品を見てもらって、オリジナルの曲をつけてもらっています。擬音とかは一切なしで、全編ミュージック。世界に向けて発信するなら、音楽のほうが伝わりやすいかなっていうのもあって。
──これまでの磯部さんの作品にはなかった新しい試みですね。
今までは全部自分1人でやってましたからね。音楽に関しては、未知のコラボやし、すごく楽しみです。
──今回の作品を通じて、磯部さんが一番伝えたいことは何ですか?
それこそSDGsを全然知らない人たち、子どもたちに、“なんじゃこりゃ”、“あ、こんなことやってんのかいな”と思ってもらえればそれでいい。SDGsを知って、ほんの何十cmでも前に進んでもらえればいいな、ということぐらいです。
──SDGsについて考えるきっかけになれば、ということですね。
SDGsの意味も読み方もわからない人、まだまだ多いと思うんです。“こういうことをやってんねや”っていうことを、アニメを見て頭の片隅にでも入れていただければ。
ゆくゆくは僕1人で作った作品だけじゃなく、子どもたちと一緒にSDGsをテーマにしたクレイアニメを作って、世の中に出せたら面白いなとも思ってます。“磯部と○○小学校のみんな作”みたいになったら面白い。本当に、これが何かの“始まり”になってくれたらうれしいですね。
子どもから大人まで誰もが楽しめるクレイアニメで、SDGsへの第一歩を踏み出してもらいたい……そんな磯部の思いが込められた作品は、YouTubeにてご覧いただけます。ぜひチェックしてくださいね!
【関連記事】動画概要
『貧困をなくそう』
URL:https://youtu.be/0wg3jrzZpms
『飢餓をゼロに』