先日発売が発表された、東野幸治の最新書籍『この素晴らしき世界』。
東野幸治の最新エッセイ集である本書は2月27日(月)、新潮社より刊行されることになりました!

「週刊新潮」連載時から話題の、いくら毒舌を吐き続けても絶対に嫌われない男だから書くことの出来た「吉本バイブル」、ここに誕生!
極楽とんぼ・加藤による単行本化記念の描き下ろしと、キングコング・西野による“東野幸治論”も特別掲載されているとあり、注目を集めています。

関連記事:ゴシップ通・東野が容赦なくイジり倒す「吉本バイブル」発刊、芸人達の隠れた伝説に迫る
【限定公開!】東野幸治が贈る吉本バイブル本『この素晴らしき世界』より「どこかふざけてる女、ガンバレルーヤよしこ」

ラフマガでは、本書の発売を記念して、収録された一節を大公開!
いずれも公開期間は下記の期間のみ。

1/23(木)~2/24(月) ガンバレルーヤ・よしこ
1/30(木)~2/28(金) キングコング・西野亮廣
2/6(木)~3/6(金)  品川庄司・品川祐
2/13(木)~3/13(金) メッセンジャー・黒田有
2/20(木)~3/20(金) 坂田利夫

第四弾のメッセンジャー・黒田有の節が本日から限定公開スタート!
ぜひ、東野ワールドをご堪能下さい。

許される男、メッセンジャー黒田

メッセンジャーという漫才コンビの黒田有君という男は不思議な芸人です。漫才では関西の賞を総なめにし、テレビでも売れっ子、トントン拍子でスターの座に駆け上がっていきました。
そんな黒田君、関西のテレビをつければいつも汗だくで怒っています。色んなことに、怒ってる? それともツッコんでる? どっちかわからないが、とにかくいつも怒鳴っている。「東京の番組はしょーもない! カンペに書かれたこと喋ってるだけやろ!あんなもん誰でもできる仕事や!」「どうせお前らグラビアの女は、テレビ出るためにプロデューサーに抱かれてるんやろ!」「何でもかんでも『美味しい~! 口の中で甘さが広がる~!』とか味もわからんのに適当なこと言うな!」。
彼の一言一言に、番組を観覧に来た年配のおばさん達は大笑い。
「何を笑とんねん! おばはん!」
黒田君のツッコミで更に笑い、仮におばさん達が笑ってなくても、「おい! 金も払わんと観に来て何で笑わんねん! どうせ行くとこないんやろ!」と憎たらしい顔でポケットに手を突っ込みながら怒鳴ると、ナゼかおばさん達は笑ってしまうのです。私は普段、東京で仕事をさせてもらってるので、関西で黒田君とレギュラー番組をするようになってビックリしました。東京の番組でお客さんにそんなことを言うタレントはいません。心無い私ですらそう思うのだから、黒田君の客イジりは相当酷い。
一度楽屋で「黒田、何でお客さんにあんな汚い言葉遣いするん? お客さん怒らへんの?」と聞いたことがあります。その時、黒田君は「こっちは嘘でも笑かしてやってんのに。全然笑わへん。ほんなら来るなや! って思うんですよね」と、至って真面目に答えました。本気で客にキレてんねや……。私とはあまりにもタイプが違います。だから私としては興味津々です。
メチャクチャなのに、関西の人達から愛されてる男。黒田君は特に、おじさんおばさん達から愛されています。いわゆる、「可愛げ」のある芸人というヤツです。
明石家さんまさんに、ある芸人が、「テレビに出るために必要なのって何ですか? 笑いの才能ですか? それとも別の何かですか?」と聞いたら、さんまさんは、「テレビに必要なのは可愛げやろ」と即答したそうです。その「可愛げ」が黒田君にはある。正確に言うと「可愛げ」があると私だけは思っているんです。犬で言うと黒田君は血統の良い犬ではありません。雑種です。当たり前ですが家の中で飼ってもらえません。庭でも飼ってもらえません。ただの野犬です。近寄ってくる人には「ガルルルルゥ」と唸り、人を寄せつけません。でも夕方になると人気のない神社の片隅で寂しそうに「クゥ~ン」と鳴いています。「本当はみんなと楽しく遊びたいんだよ」と言いたげに「クゥ~ン」と更に大きく鳴きます。黒田君の場合はその「クゥ~ン」の部分が「可愛げ」だと思います。
みんながイジりたくなる芸人。色んな人達からのムチャぶりにもノリツッコミで返す(最近あまり観ない技法ではありますが)。そしてお客さんだけに限らず芸人さん達も笑う。たとえ笑わなくても黒田君の「なんやお前ら、笑わんな。何しに来たんや!」で結局、みんなが笑い、気がつけば黒田君が話の中心になっている……。毎回そうです。どんなに悪態をついても、可愛げがあり憎めない。可愛げのなさを自覚している私としては、悔しい限りです。
そんな黒田君は酒癖が悪くて有名です。この世界に入った当初から酒での失敗は数知れず。漫才の出番に遅れたり、酔ったまま舞台に立って相方のあいはら君にめちゃくちゃにキレられたり、当時ボクシングの世界チャンピオンだった徳山昌守選手に酔った勢いで頭突きをしたこともありました。特に若手の頃は黒田君と中川家の二人はいつも飲んでいました。飲んでは3人で喧嘩してまた飲んで……。「酒場であの3人に会ったら逃げろ!」というのが若手芸人の合言葉になっていたぐらいです。
一度、まだ売れる前の黒田君と中川家の3人が酔っ払った一般の方と口論になり、一触即発の状態に。数名の警察官が来て、もみくちゃになったことがありました。もちろん捕まることもなく注意されただけで終わったのですが、これが後日、全国放送のテレビ番組「警察24時」で大阪の酔っ払い同士の喧嘩としてオンエアされてしまいました。泥酔していたのでテレビカメラが回っていることに気がつかなかったそうです。全員の顔にモザイクがかかり、声もボイスチェンジャーで甲高くなっていてバレなかったのが不幸中の幸い。芸人としてテレビに出る前に、酔っ払いとしてテレビ出演した3人なのでした。
トラブルはまだまだあります。吉本の若手芸人が一度は必ずお世話になる居酒屋「たこしげ」のマスターは芸人が大好きで、お金がない若手にも「出世払いでええぞ」とタダ同然で食べさせたり飲ませたりしてくれるのですが、そのマスターが唯一「店に来ても絶対に追い返す。二度と来て欲しくない!」と言う芸人が黒田君です。
なぜか? マスターはお金がない時代の黒田君を可愛がり、安く飲み食いをさせていたのですが、仕事が忙しくなり売れっ子になると黒田君の態度は一変。店で注文した料理に「こんな不味いもん食えるか!」と暴言を吐き、大喧嘩となった結果、出入り禁止となりました。これはマスターから直接聞いた話です。
そんな黒田君でしたが2009年の年末、ガールズバーで料金の支払いを巡ってトラブルを起こした挙句、店長に一方的に暴力をふるい、傷害容疑で逮捕されてしまいました。もちろん、この不祥事を受けて芸能活動は自粛です。すごく反省して、お酒も自粛してました。被害にあった方には大変申し訳ないのですが、示談が成立して不起訴になったこともあり、我々芸人仲間は、復帰した黒田君からその時の話を一日も早く聞きたくて聞きたくて、うずうずしていました。
「捕まった時は?」「警察署では取り調べで吊るし上げられたの?」「留置所では何て呼ばれるの? 黒田? 番号?」「護送される車から見る報道カメラマンや芸能レポーターはどんな感じ?」「前科兄さんって呼んでいい?」
当たり前ですが、世間の声や社会常識を踏まえて復帰にはかなり時間がかかりました。そして約1年後、世間の皆さんから「そろそろ復帰してもええやろ」という声が多く届いたこともあり、黒田君は晴れて復帰できることになりました。復帰後は舞台やラジオ、テレビでみんなからイジられまくりました(ちなみに留置所では42番と呼ばれていたそうです)。それを必死で笑いに変えて、大爆笑を巻き起こしたのは流石でした。
何度失敗しても、最後はみんなから許してもらえる芸人。関西に必要な、本音で喋り本音で怒り、本音でぶつかるのに、可愛げがあるメッセンジャー黒田君。やっぱり彼から、今後も目が離せないでしょう。

【関連記事】