天竺鼠・川原克己が文と絵を手がけた絵本『ららら』(ヨシモトブックス・刊)が現在、好評発売中です!

本著は、「そう来たか!」と驚く独自の発想力と唯一無二の世界観を持つ川原による、初めての絵本。摩訶不思議な17篇の物語には、川原らしさが満載。それぞれをイメージして描き下ろされた絵も、見れば見るほどじわっとくる味わいあるものばかりです。

今回のインタビューでは本著についてはもちろんのこと、1月14日まで東京・有楽町マルイにて開催された個展『Maenomeri展~みなさんの前のめりを卵とじにします~』ほか、今後の創作活動についての展望も話してもらいました。

(天竺鼠・川原克己)

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――今回収められている物語は元々、ご自身のブログに書いていたものなんですよね。

「最初、ブログに書いてたんですけど、絵本を出したいなと思ってから放ったらかして、携帯電話とかに小さい物語をバーっと書いていて。その中から選んだ物語を、今回の絵本に入れました。だから、物語自体はもっともっとあるんです」

――17篇の物語はどうやって選ばれたんですか。

「内容が被らないように、ということですね。いろんなジャンルの話があって。例えば『カバに育てられたF1レーサー』だったら、似たような話の中からじゃあカバかなっていう感じで決めていきました」

――物語自体は、どういうときに書かれていたんですか。

「新幹線の移動中が多いんじゃないんですかねぇ。自由席に乗ったときにサラリーマン同士が会社の上司に怒られたとかそういう話をしていて、どこが自由席やねんってよくわからないことを思ったりしたんですよ。もちろんそういう意味じゃないことはわかってるんですけど(笑)、みんな、いろんなものに縛られてるのに自由席っていうところで好きな席に座ってるのが面白いなと思ったりして。……新幹線って赤ちゃんが泣いていたり、人がいっぱいいるから(アイデアが)思いつきやすいんですよね」

――自由席に乗るのは敢えて?

「敢えて乗ることもありますよ。仕事に向かうときはさすがにできないですけど、帰るだけやったら自由席でええかなって。自由席のほうが面白いんです、いろんな人がいっぱいいるから」

――なるほど。17つの物語を選んでから、絵を描き始めたわけですよね。

「そうですね。ただ、『洞窟』だけ描くものがなかなか決められなくて……。どうしようかなぁって悩んで、レシーブでええかってなったんですかねぇ。書いてみたら難しかったんで、(描き直しも)そのまま載せちゃおうということになりました。この絵を見て、どういう意味が込められているのか、真剣に考えている人がいるところも含めて好きです(笑)」

――(笑)。奥付にレシーブする男の子が載ってますが、これ、うまく描けてますね。

「そう! やっと上手に描けたので、あぁ、よかったねぇ!ってみんなに拍手をもらえるように、最後に入れました。あんだけ練習すると、上手に描けるもんですね」

――制作期間はどれくらいかかったんですか。

「物語は内容自体、変えてないんですけど、文章的におかしいところは手を加えました。絵は……期間としてはどれくらいやろう? たぶん(刊行の)3~4ヵ月前には言われてたと思うんですけど、最後の1週間くらいで頑張って描きましたね(笑)。ほんまにギリギリで、やばい! 明日までに出さないといけないんだって思いながら描いて……。最後にうつらうつらしながら描いたのが、『どうせまた読むのに読み終わる物語』の絵です。走る姿を描きたかったんですけど、難しかったんで最後まで描かずにいて。で、明日までに出さないといけないってなったんで寝ぼけながら、何描いてんだよ! 二度としない走り方ってなんやねん!って思いながら描きました。……そうだ、『赤いまんじゅうを怖がるおじさん』は、これとこれ(おじさんと男の人)は先に描いてたんです。なんかもう1つ欲しいが描けたから寝ようと思って……眠りに入る前に『赤いまんじゅう~』のことをふと考えて、富士山を書こうと思い立って寝ぼけながら描きました。なぜ富士山になったのかは、今もわからないです」

――川原さんのお気に入りは? 個人的に物語は「どうせまた~」が、絵は「誰のものでもないエビフライ」がいちばん好きでした。

「あぁ、いいですねぇ! エビフライの絵はでっかいのを描きたいっていうイメージがあって、最初に描きました。『どうせまた~』も、僕っぽくていいですよね。僕は……『カバに育てられた~』ですかねぇ。好きだから最初に持ってきたんですけど、この内容のなさがいい。カバに育てられたのにどう育てられたかも、カバに育てられたF1レーサーだからこその試合展開とかもないところが大好きです。あとは考えてくださいって読み手に委ねられるのは、絵本だからこそできることですし、この話と『魔女と魔女と僕』は1、2番目に好きですね。あと……絵は表紙がいい。これは最後の『ららら』に描いているイラストのアップなんですけど、油絵の具で描きました。ほかの絵は、水彩色鉛筆。絵が描くのが好きって言ったら、ブルゾンちえみが誕生日にくれたんです。鉛筆で塗ってあとから水に溶いて絵の具にしたり、鉛筆をそのまま水に浸けて描いたりして描きましたね」

――個展も大盛況ですね(註:本インタビューは最終日14日に敢行)。

「ありがたいです。有楽町っていう、いい場所でやらせてもらったのもよかったです」

――ここまで大きな個展に初めて挑戦してみたことで、やりたいこともいろいろとまた出て来たんじゃないですか。

「今回、空間デザインもやらせてもらったんですけど、あぁ、こういうのって好きだなぁと思いました。水を張ってみたり、変なところから風を出したり、制限のない空間だといろんなことができそうだし、もっといっぱいボケられるなぁと。今回も楽しんでくれている人たちを観るのが好きだったので、いつかもっといろんなことができる空間を作って上から観たい。ネタを作って観てもらう、ものを作って観てもらうのも好きですけど、空間にハマりそうです。今回の個展も、全国でできたらいいですね」

――絵本については、いかがですか?

「出したい気持ちはあります。絵本って長いこと読んでもらえるものなので、いろいろと出していって、どれか1つでもいいから目に止めてくれた人が、ほかのものも読んでみようと思ってくれたらいいなと。そうなるまで、出し続けるのもいいかなと思ってます。あと、絵も描いていきたいですね。僕が面白いなと思う1つに、腹立つことっていうのがあるんですよ。なんやねん、これっていうね。絵自体を油絵の具で描くと、何、色重ねてんねんみたいな感じで”なんやねん”が増して、より腹が立つじゃないですか。だから、今後は油絵もやっていきたいなと思っています」

――今回の絵本は大人が楽しめる要素も多いですけど、川原さんの絵のタッチとか話の空気感って子供も面白がりそうですよね。

「ね! ジャルジャルの後藤さんが2~3日前に、動画を送ってきたんです。子供がお前の絵本の中にある『ガモジ』っていう話を読んでるんやけど、ちょっと心配やわぁって。ずーーっとガモジ! ガモジ! ガモジのとこ読んでって言うてくるって(笑)。ガモジってなんなん? 何これって子供に言われてんねんけど、なんて答えたらいいねん。ちょっと怖いねんけどって言うから、知らないですよ〜って返しました。そういう感想は嬉しかったですね」

――後藤さんは不安がってますけど(笑)、子供向けのワークショップとかやってほしいです。

「うわぁ、やりたい! 子供って、しつこいの好きじゃないですか。僕自身も大好きで、それこそ後藤さんの家へ行って、子供がよくやるうわぁっていう脅かし合いをやってたんです。僕、ずーーっとできるし、やればやるほど面白くなるんですけど、そのときは先に子供が飽きて、もういい、もういい!って言われましたね(笑)。やるなら絵本の読み聞かせとかもいいかもしれないです。あと、テレビの番組で子供と被りものを被って踊りたい。これはいつか叶うといいなと思ってます」

――1つでも多く実現できることを願っています。では、最後にインタビューを読んでくださっているみなさんへ、改めて絵本『ららら』をアピールしていただけますか?

「えぇっと……そうやなぁ。たくさんの人に手に取ってもらって、読んでもらって……使ったことがない脳みそを刺激して、気持ち悪くなってほしいなと思います。絵本は何冊あってもいいですからね。1冊と言わず、2冊、3冊と手元に置いてください。よろしくお願いします」

『ららら』
文・絵:川原克己
価格:1400円(税抜)
ヨシモトブックス刊