先日発売が発表された、東野幸治の最新書籍『この素晴らしき世界』。
東野幸治の最新エッセイ集である本書は2月27日(月)、新潮社より刊行されることになりました!

「週刊新潮」連載時から話題の、いくら毒舌を吐き続けても絶対に嫌われない男だから書くことの出来た「吉本バイブル」、ここに誕生!
極楽とんぼ・加藤による単行本化記念の描き下ろしと、キングコング・西野による“東野幸治論”も特別掲載されているとあり、注目を集めています。

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ラフマガでは、本書の発売を記念して、収録された一節を大公開!
いずれも公開期間は下記の期間のみ。

1/23(木)~2/24(月) ガンバレルーヤ・よしこ
1/30(木)~2/28(金) キングコング・西野亮廣
2/6(木)~3/6(金)  品川庄司・品川祐
2/13(木)~3/13(金) メッセンジャー・黒田佑
2/20(木)~3/20(金) 坂田利夫

第一弾のガンバレルーヤ・よしこの節が本日から限定公開スタート!
ぜひ、東野ワールドをご堪能下さい。

どこかふざけてる女、ガンバレルーヤよしこ

ガンバレルーヤといういま上り調子の女性コンビがいます。
黒髪ロングのよしこと、金髪ショートのまひるは、共に頬をチークで強めのピンク色に塗り、決して美人とは言えない顔立ち(そもそも美人に近づこうともしていない)。しかも衣裳の色はお決まりで、ピンク色がよしこ、黄色がまひる。そんな外見なので、よく目立ちます。
二人は不思議なタイプの女芸人で、ネタがめちゃくちゃ面白いわけでもなく、トークがめちゃくちゃ面白いわけでもない。でも番組にいたら二人の話にみんなが爆笑する。どこまでが本当の話なの!?と。そしていつの間にか、真相は分からないけれど面白いからオールOK! となっている。ガンバレルーヤはそんなコンビです。
二人は吉本の養成所NSC出身ですが、出会いはNSCではありません。大阪のNSCに通うために引っ越したマンションで二人は出会います。

ある日よしこがエレベーターに入っていくと、後に相方となるまひるが便秘からくる腹痛でうずくまっていました。
「大丈夫ですか?」とよしこが声をかけると、「便秘でお腹が……痛くて……」と苦しむまひる。けれど、よしこはまひるの部屋番号を聞き、去ってしまいます。
あっけにとられたまひるは何とか部屋に戻ってしばらく横になっていると、よしこがボウルいっぱいにキンピラごぼうを作って持って来てくれました。
「ごぼうは繊維質が豊富だから、食べると便が出やすくなりますよ。キンピラごぼう多めに作ったので食べてください」。そう言ってボウルを置き立ち去るよしこ……。まひるはボウルに入ったそのキンピラごぼうを食べ尽くしました。
すると今までの便秘が嘘のように、詰まっていた便がいっぺんに出てきて、お腹の痛みも一気になくなりました。
後日、お礼を言いに行くと、互いに同じNSCに入る準備中だと判明。意気投合した二人は仲良くなり、そのままコンビを組むことになったそうです。
……とここまで書いていて、私は感じます。こんな話、あります? どこか嘘くさいですよねぇ。でも、この嘘くささがお笑い芸人としてのとても大事な要素だと私は思っています。

どこかふざけている。どこかナメている。どちらも芸人に必要な要素です。どこまでが本当の話なの? と聞いている人に思わせることが出来たら勝ちといっても良いでしょう。全てが本当の話でなくていいのです、面白ければ。ガンバレルーヤにはそれが備わっているのです。
よしこの話に戻りましょう。
まだ芸人としての仕事がない頃、よしこはスナックでアルバイトをしていました。チーママとして一人で店を任されることも多かったのですが、よしこ一人の時、カランコロンと店の扉が開いても、カウンターに立つよしこを見た途端にお客さんは再び扉を閉めて帰って行く……。そんなことが頻繁にあったそうです。
店のママから、「今までは週3の遅番だったけど明日から週1の早上がりでいいわ」と告げられたよしこ。早上がりは18時から20時までの2時間出勤で、扉が開いてもおしぼりやお酒の業者が来るぐらい。お客さんはほぼ来ません。つまりは開店準備をするためのアルバイトに格下げに。
一度見せてもらった早上がりの写真には、一人寂しく笑う、完全に笑いを取りに行ってるよしこが写っていました。
よしこは正直美人ではありません。美人に寄せる気もありません。そんなよしこは、自分の容姿を自覚しながらスナックでアルバイトをしていました。なぜなら、普通のアルバイトをするより面白い話が出やすく、エピソードトークも作りやすいからだと私は思っています。自分を客観的に見る能力があるのですね。タレントに必要な能力です。

このスナックでのエピソードは他にもこんなものがあります。
バイト中、一杯700円のチューハイをお客さんに頂いて店の売り上げに貢献するのですが、よしこはそのキャラのせいか、一滴も飲ませてもらえなかったそうです。だからお客さんが酔っ払った時やトイレに行った時に、お客さんのボトルをこっそり飲んで、減らしていたとかで。またしても、どこまで本当なのか。
また、よしこはお客さんと一度だけデートしたことがあるそうです。店で知り合った年下の男性にデートに誘われました。喜んで待ち合わせ場所に行くと、そこはその男性の実家でした。
「親父が亡くなったから遺品整理を手伝ってほしい」
よしこは一生懸命遺品の整理を手伝いました。遺品の中からその日男性がつけていた白い数珠と色違いの黒い数珠が出てきて、それをプレゼントされました。複雑だったけどうれしかったよしこ。
しかしその数珠をつけ始めてから自宅でポルターガイスト現象が起こるようになりました。電気がチカチカしたり、キッチンで横たわっていたら腹の上に皿が落ちてきたり。さらには幽霊まで見るようになり、仕方なく数珠を外したそうです。
スナックのバイトが週1の早番になってから収入が減ったので、昼間に川の清掃のアルバイトも始めたよしこ。しかし、川掃除のバイトの終わりが遅くなると、家に帰ってお風呂で体を洗う時間がなくなり、そのままスナックに出勤したら「ドブ臭い!」と言われ、店の外に出されてしまったそうです。
お客さんのボトルをこっそり盗み飲んだり、デートが遺品整理だったり、ドブ臭いから店の外に出されたり……いちいちエピソードが面白すぎます。真相が本当でもウソでも、このふざけた感じがよしこの面白さだと私は思っています。

よしこと相方のまひるは、まだあまり給料が高くないのでコンビで同居しています。シングルベッドで二人で寝て、少ない量のお湯で済むので、小さなユニットバスに二人で入るそうです。でも、お風呂に浸かっていると、時に喧嘩になります。
というのは、よしこがまひるにバレないように、湯船の中でオシッコをするそうです。勘のイイまひるは問い詰め、苛立ちながらよしこを殴ります。学生時代に女子野球をやっていて肩が強いから、よしこをボコボコにするまひる。泣いて詫びるよしこ。ね、笑ってしまうでしょう? こんな汚い話を自慢げに披露するのはお笑い芸人だけです。
ちなみに、よしこの背中には龍が天に昇っているようなブツブツがあるそうです(本人が得意げに教えてくれました、決して実物は見ていません)。
そんなよしこのブツブツでは、2018年の秋にまた伝説が生まれました。よしこが「下垂体腺腫」という病気になったことによるのですが、「よしこは笑いの神様に愛されている芸人」だと、芸人仲間の間でかなり話題になった話です。
「下垂体腺腫」という病気は脳の一部である「下垂体」という部分に腫瘍が生じるものだそうです。下垂体は小さいながらも様々なホルモンを分泌する機能を担っているので、下垂体腺腫が発症するとホルモン分泌に異常が生じ、様々な症状が引き起こされるとか。結果、よしこの鼻は以前より膨らみ、顔にブツブツができて顎が前に飛び出してきました。
それらの症状が現れた当初、それが「下垂体腺腫」によるものだと、よしこも周りも気が付きませんでした。当時ガンバレルーヤは、ちょうど東京に拠点を移し、大ブレイク目指して頑張っている段階でしたので、「笑いの神様がこのタイミングでよしこをより面白い顔にして、東京進出を後押ししてくれたんだなぁ」と私は勝手に思ってました。

よしこはより面白くなった自らの顔を、自虐的にイジりまくりました。また、色々な芸人さんからイジられたり、小雪さんや多部未華子さんの似てない顔真似をしたりしては以前よりウケていました。まさに、破竹の勢いの活躍です。
芸人仲間は「ドーピングブス」「ズルいぞ、顔を面白くして笑い取って!」と、半分マジでひがんでました。このご時世、自らの容姿を徹底的に笑いにするスタイルには批判の声もあると思いますが、本人は一向に気にしないオールドスタイルの芸人です。
しばらくして仕事が少し落ち着くと、下垂体腺腫だと分かりました。当時よしこに病気のことを聞くと、「頭の中に良性腫瘍……いえ、大きめのキンタマができて~」と必ず良性腫瘍のことを大きめのキンタマに喩えていました。もちろん、手術で大きめのキンタ……いえ、良性腫瘍は除去でき、無事に仕事復帰しました。
すると、肌のブツブツはなくなり鼻も小さく戻って、少しブスじゃなくなりました。ただ病気の影響で前に突き出した顎だけは、骨の変形なので元に戻らなかったそうです。
「元に戻すには整形手術で削らないと治りません」とここぞとばかりに、自らの不幸話を得意げに披露し笑いを取るよしこ。私が真剣に「後遺症はないの?」と聞くと、「腫瘍があったところに栓をしているので、鼻をかむとそれが抜けてしまうため鼻がかめなくなり、鼻の中に鼻くそが溜まるのが困ります」と真面目な顔で答えてくれました。どこまでもふざけていますねぇ。
そんなよしこですが、唯一ふざけていない話があります。
番組の収録でウケた時は、帰りにエレベーターの前まで大勢のスタッフさんが見送りに来て「お疲れ様でした、またお願いします!」と口々に労ねぎらってくれるのですが、うまくいかなかった時は誰も来ない。静かにエレベーターに乗りゆっくりと降りていくそうです。まるで地の底に沈んでいくように……。
だから毎回エレベーター前まで歩いていくのが怖くてたまらないといいます。
「今日は良かったの、悪かったの? また呼んでもらえるの、もう二度と呼んでもらえないの……?」
途中、振り返りたい衝動に駆られるのをグッと堪えるそうで、私はそれを聞いて安心しました。よしこも人の子でした。
私も含めて芸人やタレントはみんな不安です。また呼ばれるか、もう二度と呼ばれな
いのか──この戦いは永遠に続くのです。
まぁ呼ばれなくなったら、またスナックでアルバイトをするんだ、よしこ! 面白い話がきっといっぱいできるよ。

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