12月14日(土)、埼玉県・狭山市立新狭山小学校にて一ノ瀬文香の講演会「性的な在り方に関わること全般を指す『セクシュアリティ』〜自己肯定と多様性の尊重〜」が開催されました。

新狭山小学校PTAが主催した本講演会は、「第4次 狭山市男女共同参画プラン」に即した「第4回 家庭教育学級」にあたるもの。子どもも保護者も性的なことをきちんと学んで話せるようになり、あらゆる特徴を持った子どもたちが自分らしく生きていける力を身につけていくことを願って開催されました。

日本のタレントとして初めてレズビアンをカミングアウト

これまでに開催された家庭教育学級に集まった人数の倍以上の方たちが駆けつけたそうで、会場は大盛況! そんな中、PTA会長に紹介されて登場した一ノ瀬は、小学校の会議室を見渡し「懐かしいです」とニッコリ。まずは自身の自己紹介から講演をスタートさせます。

家柄や学歴を重んじる家庭に育ったことや、現在ではタレント活動をしながら新宿2丁目にある異セクシュアリティ交流Barを経営していること、また日本のタレントとして初めてレズビアンをカミングアウトし、2015年には“日本の芸能人同士初の同性婚”として話題になったことや、25歳のときにADHDだと診断されたことなどについても明かす一ノ瀬。

続いて、まずは講演会のテーマでもある『セクシュアリティ』について簡単にふれ、セクシュアリティとは生物学的性や性自認、性指向などさまざまな要素が含まれることや、単なる性教育ではなく包括的なものであり、また人権の観点からも不可欠なものであることなどが説明されます。

ここでお客さんが3人1組になり、ワークショップを開始。それぞれが『セクシュアリティ教育』のイメージを順番に話していくというものなのですが、意外にも最初から積極的に話す人が多く、みんながワイワイと話す声で会場は活気に満ちあふれます。

「知りすぎてはいけない」ことなんてない

生物学的性、性自認、性指向などについて詳しく説明したあとは、フィンランドでの5歳児への教育例を具体的に説明。「自分が楽しく遊んでいたオモチャを急にとられてしまったらどう思う?」→「じゃあ、自分が友だちのオモチャで遊びたいと思ったときはどうしたらいいと思う?」など、子どもたちに自分ごととして考えさせ、“許可を得ることの大切さ”について伝えたり、多様な家族のあり方について説明するなど、広く人権の観点からセクシュアリティ教育をスタートさせていることを紹介し、「初期の性教育は人権教育である」ことを説明。

また、「小さな子どもにどこまで教えればいいのか……」と悩む保護者の方に「なんでもそうですが、知りすぎていけないことはないですよ」とアドバイスする一ノ瀬。性教育をすることで性行動を助長するのでは?という懸念する声もあるが、実際にはその逆で、世界中の性教育を研究した結果、むしろ性について適切な情報を提供し、考えたり議論する機会をつくることにより慎重化することがわかっていると明かしていました。
さらに、セクシュアルマイノリティ(LGBT)について、日本の人口におけるその割合は約8%(約13人に1人)といわれているのに、多くの人が差別や偏見を怖れ、自分の本当の姿を隠して生きていたり、本人も気づいていないなどの理由から、その多さは実感しづらいことが明かされます。

あらゆる差別問題の解決には「制度」と「風土」の改善が必要

そんなLGBTを取り巻く現状について、「現在、主要先進7カ国(G7)の中で、婚姻やそれに準じる権利を同性愛者に認めていないのは日本だけ。日本は「みんなと同じじゃなければいけないという思いこみが強い」と話し、あらゆる差別問題を解決するために、「制度」と「風土」の改善が必要だと話す一ノ瀬。

そのために学校ができる制度・風土改革について、たとえば制度の面でいうと啓発キャンペーンや多目的トイレの設置など、また風土(人々の意識)の面からは、「子どもに議論をさせる」「男らしい、女らしいという言葉を“〇〇さんらしい”に変える」などを提案します。

また、セクシュアリティ教育から得てほしい3つのこととして、「コミュニケーション力の向上」「本質的に自分を大切にする」「自己肯定感を高める」を挙げ、自己肯定感を高めるためにはありのままの自分を大切にすることや、社会(学校や家庭)を変えていける経験が大事だと訴えました。

これまでの話を聞いて発見したことや思ったことを3人1組で話し合うワークショップのあとは、質疑応答の時間へ。

意外にも(?)、本人へのプライベートな質問が多かったのですが、ざっくばらんに次々と答えていく一ノ瀬。「両親の理解はあるか」という質問には「理解というより諦め」とした上で「カミングアウトって、点じゃなくて線だと思う」と、自身の経験を振り返っていました。

今後の子どもたちへのセクシュアリティ教育について、また学校運営にとっても大いに参考となる、意義深い講演会となりました。

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