3月7日(水)、東京理科大学で落語家の月亭方正が就職活動生を対象に特別講義を行いました。

就職活動に悩む学生が、「落語」について学び自ら実践するなかで、プレゼン力やコミュニケーション力など、就活を乗り切るために必要な力を磨くことを目指して行なわれる本講座。2月から3月にかけての全6回の講義を通して、参加学生は落語の基本的なスキルを学び、最終的には人前で落語を披露します。

落語には、人に情報を伝えるためのテクニックや観客を味方につけるための力など、就活に応用可能なスキルが数多く含まれているそう。高度で複合的・総合的な話すテクニックを、月亭方正がみっちり伝授していきます!

4回目となるこの日の講義は、東京理科大学教職教育センター教員の井藤元准教授をファシリテーターに迎え、「落語の道徳論-生き方のコツを身につける」をテーマに行なわれました。

これまでの3回で、自身の半生や、落語に出会って自分がどう変わったか、また人生で大切にしていることなどについて思いを語ってきたという方正。2回目の講座では学生の前で実際に落語を披露したそうで、この日の講義からは生徒が落語を発表し、方正が講評することに。この日は5名の生徒が着物を着て落語を初披露しました。

無理矢理にでも口角を上げることで、緊張がほぐれる

教室に入ってくるなり「さっきすごくいい話を聞いてん!」とうれしそうな方正。「就活前に大学で講義した先輩の落語家さんから聞いた話やねんけど、その講義を受けた学生さんが、面接で緊張しすぎて、頭が真っ白になって言葉がなにも出てこなくなってしまったときに、思い切って落語を披露したら受かったんやって! これ言うたらみんなめっちゃ喜ぶんちゃうかなと思って」とニコニコ顔で話します。

その後も、この日落語を披露する生徒たちの緊張を和らげようと、声を出す練習や口角を上げる練習をして、教室の空気を温めていきます。

続いて、落語の定型である開場の音や始まるときの音、出囃子などいろんな太鼓の音を聞かせ、説明していく方正。落語を始める前の作法を一通り説明し終わったところで、緊張との向き合い方について話します。

「僕が絶対やることは、無理やり口角を上げること。すっごいかわいい顔になるから、口角上げてみよか」と提案し、やってみせます。「この講座はコミュニケーションをとることが苦手な人や、コミュニケーション能力を高めたい人のための講座ですけど、そんな人にとって落語はすごくいいんですよ。だって、落語には決まった形があって、それはおもしろいんやもん。安心感があるよね」と話す方正。

でも、「最後は一生懸命やること。一生懸命にやってるだけで感動するんです」とアドバイスし、いよいよ学生たちの発表へ。

個性あふれる語り口調で次々と落語を披露する学生たち

最初に落語を披露した吉田さんが選んだのは、『鶴の恩返し』。ひとりでおじいさんとおばあさん、鶴の役を演じ分け、小道具の扇子も見事に使いこなす吉田さんに、方正も思わず「すごいやん! 僕ここまでやると思ってなかったわ~」と感心し、「ちゃんと伝わりましたし、最後はニヤッとしました。え、どこが『コミュニケーションが苦手』なん?」と、あまりの出来栄えに戸惑いすら見せます。

この日、落語を披露した学生は全部で5人。みんなそれぞれ個性あふれる語り口調で、『ケチの鰻』『みそ豆』などの落語を次々と披露します。披露した感想を聞かれた生徒は「細胞が喜んでる感じが……」「教員採用試験にも役立つと思いました」「楽しかったです」と、得るものも大きかったよう。

次回に落語を披露する予定の生徒から「関西弁の落語を標準語に直そうとするが、うまくいかない」「鰻の匂いを嗅いでご飯を食べる場面で、美味しそうな表情ができない」などの悩みが飛び出し、方正が各生徒に丁寧にアドバイスしたところで、本日の講義は終了しました。

方正「大学生ってこんなかわいかったかな?」と笑顔

これまでにも大学で講義をしたことはあるものの、東京で、しかも少人数の講座を担当するのは初めてだという方正。今回の講座について「僕の年齢もあるんでしょうけど『あれ、大学生ってこんなかわいかったかな?』って。この子たちのこれからに、ちょっとでも役に立つんやったら、教えてあげられることは全部教えてあげたいなって思いました」と微笑みました。

初めて生徒の落語を聞いた感想は、「かわいいし、頭いいなぁと思いました。なかなかできないですよ、初めてであそこまで。コミュニケーションを取るのが苦手な子たちって聞いてたんやけどなぁ……」と、信じられない様子。

今回の講座で、自分自身も得るものが多いと言い、「同じ話をしても、話す人によって違うし、人となりがなんとなく見えてくるということを学生の落語を見ていて改めて感じます。だから、落語家としていろんな話を覚えることも大事やけど、一番やらなあかんことは『人徳を積む』ということ」と、改めて襟を正す方正。

最後には、「『いいやつってどんなやつ? 悪いやつってどんなやつ?』という善悪判断で大切なことが落語には入ってるから、そういう人として大事なことを落語で学んでから、社会に出てほしいなと思います」と学生たちにメッセージを贈りました。