漫才の頂点を決める決戦『M-1グランプリ』(ABCテレビ・テレビ朝日系列)が今年も開催。プロ・アマチュア問わず「とにかく面白い漫才」を基準とする審査のもと、最も面白い漫才師が決まるとあって、今年も総勢5,040組が名乗りをあげ、熾烈な戦いに臨んでいます。

ラフマガでは、12月22日(日)に生放送される決勝戦を前に、歴代優勝者へのインタビューを実施中。

今回、話を聞いたのは『M-1グランプリ2008』王者、NON STYLE・石田明。それまで関西の賞レースを席捲していたものの、唯一手に入れられていなかったのが『M-1』王者の称号。いかにしてNON STYLEは漫才師の頂点に上りつめたのか? 当時を振り返ってもらったほか、今年の『M-1』についても話を聞きました。

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イキリ漫才を捨てて挑んだ新ネタ

――初めて『M-1』に参加されて以降、なかなか決勝にたどり着くことができませんでした。当時、どんな心境だったか教えてください。

準決勝で負けたり、3回戦で負けたりして悔しがってはいたんですけど、そこまでリアリティーがなかったんですよね。もちろん(準備は)やってはいるんですけど、予選が始まった段階で“決勝に行かれへんな”っていうのがどっかにありましたし、それやったら関西の賞レースで負けてるほうが悔しかったと思います。

「なんでか?」っていうと、ビジョンが見えているから。“(関西の賞レースは)決勝に行って優勝できるかも”ってビジョンがあったけど、『M-1』に関してはすごい遠い道で、みんなほど悔しさを感じていませんでしたね。

で、2007年に、それまでやっていたイキリ漫才の進化形をやったんですよ。敗者復活では自分ら的にもいい出来でやれて“結構よかったんちゃうん?”って思っていたんですけど、結局、サンドウィッチマンさんが決勝に上がったんですよ。その瞬間初めて“悔しい”と思って涙が出ました。

“ようやく決勝にあがる器になってきたんかな”って思いましたし、“せなアカンことってなんやろ?”とも考えました。もうイキリ漫才のMAX値は叩いたんで、全部捨てなアカンなと。そこから“どういうネタをやろうか?”って感じでしたね。

――2008年に披露されたのは、太ももを叩くいわゆる“自虐ネタ”でした。あれはまさに『M-1』用に作られた漫才ですか?

そうですね。年明けてすぐに(相方の)井上に「今までの漫才は捨てる。今度は二重奏みたいなやつをやりたい」って言うたんですよ。ネタの本線を走らせときながら、ボケとツッコミがあって、かぶせとかではないもう1個違うところで笑いをとりたいと思ってやり始めたんですけど、なかなかうまくいかなくて苦戦しました。

当時は『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系列)が主流やったんで、二重奏と『レッドカーペット』用のネタ作りの2つで走っていましたね。で、ある日、太ももを叩くネタを思いついて、自分でやった想像ではオモロかったんですけど、台本にしたときに全然おもんなくて……。いったん書かずに、アドリブでやったんですよ。そしたらネタ合わせ中、数年ぶりに井上が笑って“これもしかしたらオモロいかもな”って思いましたね。

――そんな裏話があったんですね。

若手の頃から「お前らがウマいのは分かったから。そんなんもうエエねん」って言われていたんですけど、自虐ネタって、自分らの中では漫才をヘタにする行為なんですよ。漫才のテンポとしてノッキングを起こしながら、どう運んでいくかっていうもので、これは「ウマい」と言われるヤツにしかできへんやろうし、初めて“俺らにしかできへん漫才を作れたな”って思いましたね。

石田と笑い飯・哲夫との秘話

――自虐ネタを携えて決勝進出が決まったとき、周囲の芸人さんはどんな反応をされたんですか?

若い頃から笑い飯さんとか千鳥さんとかとは、バチバチにやっていて、NON STYLEが「おもんない芸人の代名詞や」みたいに揶揄されることがあったんですけど、ある学園祭で自虐のネタを試したときに、笑い飯の哲夫さんに「何をNON STYLEがオモロいことしとんねん」って言われたんですよ。それがすごく嬉しかったですね。

2008年の『M-1』準決勝が終わったときに、哲夫さんに声をかけられて「石田、じつは決勝に“来る”メンバー予想してんねん」って言われて。“来る”っていう時点でカッコいいでしょ? もう自分たちは決勝に行くって確信しているんですよ。「(予想した紙を)見る?」って言われて見せてもらったら「NON STYLE」って書いてあって、「お前ら今年は行くわ」っておっしゃられて。

その後、ロビーで決勝進出者の発表があったんですけど、哲夫さんが俺の前におって、NON STYLEの名前が呼ばれた瞬間、俺のほうを振り向いて「な?」って言われて。

――鳥肌立ちますね!

「カッコいいー!」みたいな(笑)。そのあと「笑い飯」って呼ばれて、また振り返って「なっ?」って(笑)。当時は、笑い飯さんが認めてくれるのがすべてみたいな時代だったので、それで全部救われましたね。

――思い返すと、ダイアンさんやキングコングさんなど、NON STYLEさんの同期(9組中6組)が多く出た大会だったように思います。

そうですね。あと、あのときイケイケムードだったのは『レッドカーペット』のメンバーで、勢いそのままにそういう(番組でやっていたような)タイプのネタで来ていたんですよ。そんな中で隠し玉を持っていたのは、僕らと最終決戦のオードリーだけ。抜け目ない性格で良かったなって思います(笑)。実は『レッドカーペット』で二重奏のネタをやるタイミングもあったんですけど「いや、やめとこ」と。「これは『M-1』まで残しとこか」って。

――そんなことがあったんですね……。そうした戦略も功を奏して、本番で漫才を披露した後、島田紳助さんが「衝撃やった」っておっしゃっていました。

当日は、井上とネタ合わせしていても1回もうまくいかなかったですね。ずっと俺がネタ飛んで、まともにできひんくて……。本番で漫才をしてても、全体的にスローモーションで、あんまり井上の声も聞こえていないんですけど、途中からやっててめちゃくちゃ楽しかったんですよ。

漫才終わった後の総評を聞いたり、お客さんの雰囲気を見て“相当良かったんやな”って、めっちゃ客観的に思ってましたね。次にミスとか、誰かがとんでもない隠し玉をもってない限りは、行けんちゃうかって思いました。

――では、石田さんにとって『M-1』はどんな大会でしたか?

あれ以上に興奮できることってもうないんですよね。俺の青春はあそこで終わってるし、今みんなと話しても、結局『M-1』とかbaseよしもと(大阪にあった劇場)時代の話やし……。ずっとあれをこえる興奮を探して生きていますね。

「M-1グランプリ2019」決勝…石田はどう見る?

――今年の『M-1』についてもお聞きしたいです。今回のメンバーを見てどう思われましたか?

オズワルドあたりが決勝に上がったっていうのが、(準決勝は)しっかり見てくれる日やってんなって感じがして良かったですね。その中で、ベテランで実力派のかまいたちとか、すゑひろがりずがいますしね。

(メンバーが)若返ったことによって、ほんまに健全な戦いになったなって思います。やっぱり僕らは甲子園を観たいんですよ。(規定が)芸歴15年未満ってこともあって「もうプロの戦いですやん」みたいな感じやったんですけど、(芸歴的にも)甲子園に近づいてきて、純粋に泣ける大会が戻ってきたなっていう気はします。まぁこんなこと言うても、今年のメンバーに若いヤツってそんなにいてないんですけど(笑)。

――昨年、霜降り明星さんあたりから若返りの足音が聞こえてきたような感じですかね。

一昨年にさや香が入ってきて“いいぞ! その波”って思っていたらパコーンと霜降りが獲ってくれましたからね。若い子たちが切磋琢磨して決勝に7、8組行っていると、次にベテラン勢が優勝したときにもっと泣けるんですよ。当然のように決勝にベテラン勢がおるっていうのが、予定調和すぎて美しくないなって思います。

――敗者復活はいかがですか?

和牛、囲碁将棋、マヂカルラブリーもそうですけど、『M-1』がなければ、ああいった漫才にならなかった人たちがいて、ちゃんと勝ち上がってくるのはすごいと思います。あとは、アインシュタインですね。いま、マンパワーが芸能界の中で浸透していますけど、マンパワーに頼りすぎず、ネタのクオリティーを上げていければ……って感じですかね。敗者復活で上がってきて“押せ押せ”になるのは、アインシュタインと和牛だと思います。

――昨年出演されて話題となり、今年も行なわれる『ナインティナイン 岡村隆史のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)での企画「『M-1』答え合わせ」(12月26日(木)放送)。楽しみにされている方もいると思います。反響も大きかったのでは?

いろいろ言われますよ。業界関係者の方も「岡村さんのラジオ聴きましたよ」から挨拶入りますからね。だから、最近そういう系のオファーがめちゃめちゃ多いんですよ。岡村さんと(博多)大吉さんと飲んでた先で言うていたやつが「石田、こんなん飲み屋でやるのもったいない」って派生したものなんで、基本はお断りしているんですけどね。

僕は、個人の趣味とか、ボケがどう面白いとか言わずに、基本演出目線、パフォーマンス目線という“見せ方”で言うているから、皆さん見やすいんやと思います。僕らはそんなに面白くなかったからこそ、見せ方にこだわったコンビなので。

 

『M-1グランプリ2019』決勝は12月22日(日)に放送されます。果たしてどの組が栄冠を勝ち取るのか? ぜひ、その目で確かめてください!

M-1グランプリ2019

<決勝>『M-1グランプリ2019』
放送日時:12月22日(日)午後6時34分~10時00分
ABCテレビ・テレビ朝日系列24局 全国ネット生放送
司会:今田耕司 上戸彩
審査員:オール巨人 上沼恵美子 サンドウィッチマン・富澤たけし 立川志らく ナイツ・塙宣之 中川家・礼二 ダウンタウン・松本人志(50音順)
<決勝>進出者:インディアンス オズワルド かまいたち からし蓮根 すゑひろがりず ニューヨーク ぺこぱ 見取り図 ミルクボーイ +1組(敗者復活戦にて決定)
<決勝>ネタ分数:4分

<敗者復活戦>『M-1グランプリ2019 敗者復活戦 ~決めるのはアナタの1票!!~』
放送日時:12月22日(日)午後1時55分~4時25分
ABCテレビ・テレビ朝日系列24局 全国ネット生放送
開催場所:東京港区・六本木ヒルズアリーナ
<敗者復活戦>ネタ分数:4分

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