この度、ひろたあきらの初の著書である絵本『むれ』(KADOKAWA)が『第12回MOE絵本屋さん大賞2019』の部門賞である新人賞第1位を受賞しました! ラフマガ編集部は喜びに沸く本人にその心境&本の見どころを直撃しました。

東京よしもとに所属するひろたあきらが絵本『むれ』(KADOKAWA)を出版したのは今年2019年2月28日のこと。この本は、いろいろな“むれ”の中にひとつ違うものがあり、それを探しながら話が進んでいきます。“ひつじのむれ”、“さかなのむれ”などから始まり、ページが進むうちにちょっと不思議な“むれ”も登場してきて……!?

ページにびっしりと書き込まれた“むれ”の中から、違うものを探す“探し絵遊び”の面白さはもちろん、“とうめいにんげん”や“うんこ”など意外なモノのむれもあったりして、思わずクスリと笑ってしまう一冊。

発売当時からじわじわと人気を集め、重版を重ねつつ、現在すでに2万部を突破した話題作。処女作にして、快挙とも言える受賞を果たしたひろたあきらに、芸人が絵本を出した経緯や今後についてなど様々な話を聞いてみました。

ちょっとずつボケながら進む展開が芸人ならでは!?

――芸人であるひろたさんが絵本を出すとは、珍しい流れだなと思いました。どんな経緯で出版が決まったんですか? 

僕はもともと名古屋よしもと所属で、4年間コンビを組んで漫才をしていたんですけど、相方が急に行方不明、いわゆる“飛んだ”という状態になってしまって……。仕事帰りに「またあとでね」と言われたっきりいまだに行方が分からず、かれこれ数年が経ちました(笑)。

もともとは小学生のときに初めて見たチュートリアルさんの漫才にハマって、漫才がやりたいなと思って芸人になったんです。でも、相方がいなくなってしまうと漫才もできない。それでとりあえず一人で東京に来て、相方を探しまして。その後も何人かと組んだんですけど、どれもうまくいかなくて。どうしようかなと、一人でライブをしてみたことも……。

そのとき、「専門学校で絵を描いていたし、変な絵本みたいなのを描いてネタやろうかな」と思い立ち、「そう言えば、絵本ってどういうのがあるんだろう?」と本屋さんで絵本コーナーに行ってみました。そこから一気に絵本にハマっていろいろ集めるようになったんです。

――芸人になってから絵本の面白さに開眼したんですね。

そうなんです。それで絵本が好きだとSNSとかで公言していたら、吉本の劇場である神保町花月の当時の支配人から「ひろたくん、絵本のライブやりませんか?」と声をかけていただきました。そのときのライブの企画で「自分で作った本を、絵本屋さんで子どもに読み聞かせてみたらどんな反応をするか」というVTRを撮りまして。それが僕が最初に書いた絵本であり、初めての読み聞かせでした。読み聞かせなんてしたことなかったし、むちゃくちゃ緊張しましたね。

ただ、この時に書いたのは『むれ』とは全然違って、男の子の顔が転がって行って……みたいな、やや気持ち悪い奇想天外な話で(笑)。そのとき、ほかの方が書いた絵本も読んだんですけど、子どもたちの反応が全然違うんですよね。それで「自分も子どもが寄ってきてくれるような絵本が作りたい」と思いました。その後もライブは関係なく、読み聞かせ会をやったんですけど、そこで2作目として子どもを意識して作ったのが『むれ』なんです。

――『むれ』はどんな点に意識して作ったんですか?

まず子どもが「これ!」って指をさせるものにしようと。それならたくさんある中でひとつだけ違って「どれでしょう?」と見せる形が分かりやすいかなと思いました。それで「いろんな“むれ”が出てくる話にしよう」と思いついたんです。

最初は動物から考えて、ひつじやきりん、さかなが思い浮かんで。でも、ずっと芸人でネタをやってきたこともあって「動物以外の変なむれを出したいな」という欲求がムクムクと湧きまして……。

僕はめちゃくちゃ絵本が好きだったので、絵本好きの人が見ても“あ、これは面白い。ちゃんと考えて作っているな”と思ってもらえるものを、と意識しましたね。群れの中から違うものを探すという“探し絵本”の要素だけではなく、ちゃんと芸人らしさを感じられるような面白いページがあったりしたほうがいいだろうなと思ったんです。

それでちょっとずつボケていくじゃないですけど、子どもが喜んで反応しやすそうなもので、“ちょっと変なもの”をいろいろ入れ込み始めて。それと、ただ見た目が違うものだけじゃなくて、もうちょっと違う角度からいろんなパターンを入れようと思いました。

――そのときに作った『むれ』も、今出版されている『むれ』と同じような内容なんですか?

“群れの中から違うものを探す”という基本的な構成は同じですけど、最後のほうの展開は全然違います。これは出版が決まってから何度も何度も推敲を重ねてようやく決まった形で。ページ数も違ったので、手作りの『むれ』も判型が変わったりいろいろブラッシュアップしつつ、計3回作って。それを経ての出版でさらに編集者の方の目も加わりながら、ブラッシュアップした形になります。

意味わからない展開もアリ!? 自由度が高い絵本

――手作りで本を作っていたところから、どうやって出版の話にこぎつけたんでしょうか?

読み聞かせをやっていた絵本屋さんの副店長さんが『むれ』をめちゃくちゃ褒めてくださって「これは絶対に出版できると思います」と太鼓判を押してくれたんです。絵本に精通している方がそう言ってくださったのがとても心強くて。

ただ、まだ漫才がやりたいなっていう気持ちもあって揺れてはいました。そんなときに、構成作家の山口トンボさんに自作の『むれ』を見せつつ相談をしたら「完全に見えました! ひろたは絵本をやるべきだ!」と言ってくれまして……絵本に詳しい芸人もいないし、『むれ』もめっちゃいいから、騙されたと思って絵本の活動に絞ってやるのが近道だよとアドバイスをもらいました。

それで僕の中でも迷いが消えて、行きたかった絵本屋さんに行って『むれ』を見てもらったり、絵本のことを中心とした活動をし始めたんです。そうしたら、その活動をし始めてから2週間で出版が決まったんです!

――すごい急転直下の展開ですね! その2週間で何があったんでしょうか? 

『ニジノ絵本屋』さんという都立大学(駅近く)にある絵本専門店の方からInstagram経由でご連絡をもらいまして。それでお店に行って『むれ』も見てもらったりしつつ、読み聞かせによさそうな本を一冊買ったんです。そうしたら、その店長さんが作家さんに連絡をしてくれたみたいで、次の日にTwitterでその作家さん(ふくながじゅんぺいさん)からDMが来まして。「絵本作家や編集者が集まるピクニックがあるから来ませんか?」とお誘いをいただきました。

そこにいらしてた小野明さんという、絵本界では名の知れた大ベテランのフリーの編集者の方なんですけど。絵本の講師なんかもしているぐらいのすごい方で。この方に『むれ』を見ていただいたら、「直すところももちろん必要だけど、今すぐ出版できるよ! 僕ね、二社ぐらい紹介できる出版社を思いついた」と褒めていただいた。そうしたら、その場に居合わせたKADOKAWAの編集の方が「ウチから出させてもらえませんか?」と手を挙げてくださったんです。

――縁が縁を呼んでの出版ですね。でも、その軸には“誰が読んでも『むれ』の完成度が高かった”ということがある気がしますね。

出版が決まった時は、「よかったぁ」とどこか安心はしました。でも、次の瞬間には「あ、でも描かなきゃ!」という気持ちにもなりました。世に出せると決まったからといって「やったー!」って手放しに喜ぶよりも、「やらなきゃな」という決意に近い気持ちのほうが大きかった気がします。

出版が決まったのが2018年の7月、そこから発売される2019年2月まで、改めて制作期間に入りました。ページ数に合わせて構成を考え直しつつ、最後はどうやって終わろうかというところも含めて、ものすごい悩みました。原画を描きだしてからも、最後の終わり方は決まってなくて。何案も出したんですけど、なかなか編集の方のOKが出ず……。最後の4Pの展開にOKが出たのは締め切り直前でした(笑)。

制作期間中は、とにかくしんどかったですね。絵を色鉛筆で塗っているんですけど、鉛筆持つだけでもう手が痛くなるぐらいに集中してやっていましたね。本当に大変な作業でした……。

――でも、その苦労がちゃんと報われて、今回『MOE絵本屋さん大賞』の新人賞第1位を受賞されたわけですよね! 

ありがとうございます。もともと『MOE絵本屋さん大賞』の部門賞のひとつである「パパママ賞」にノミネートされていたんです。これは書店員さんが選んだノミネート作品の中から、一般のパパママが投票するというもので。でも、そちらは残念ながらダメでしたという連絡をもらいました……。「あーダメだったか……」と思った矢先に「ただ、新人賞第1位を受賞されました!」という続きがあって! 下がって上がってという不思議な感じでの知り方でしたね(笑)。

もともと『MOE絵本屋さん大賞』は、絵本界においてはすごく説得力のある有名な賞だったので、そんな自分でも知っている賞に『むれ』を選んでもらえてすごくうれしかったです。

自分で言うのもなんですけど、自分で作ったこの『むれ』という本がすごく好きなんですよ。絵本屋さんに行って、手に取りたくなる表紙だったり、読み終わったときに「めっちゃ面白いな、この絵本」という風になってほしいなと思いながら作ったので。その思いが読んでくれた人にも伝わったのかなぁと思いました。

――受賞後はまた新たな絵本のオファーがあるんじゃないかなと思いますが、今後の構想などはありますか? 

作りたい絵本の構想はたくさんあるんです。だから、次回作はぜひぜひ出したいと思っています。何冊でも出したい! アイデアはその都度、考えればたくさん湧いてくると思うので!

今回の『むれ』は最後にメッセージ性を感じますって言われるんですけど、そういう大人っぽい部分とかはなしで、めちゃくちゃ不思議な展開の話とかも出してみたい。そういう部分も僕が絵本で好きなところなので。絵本は本当に自由度が高い。0歳児向けの話も作ってみたいですね。

 

大人も子どももついつい夢中になって読み進めてしまう、ひろたあきらの『むれ』。新人賞第1位受賞も納得の面白さなので、要チェックです!

 

『むれ』

作:ひろた あきら
定価: 1,100円(本体1,000円+税)
発売日:2019年02月28日
商品形態:単行本
ISBN:9784041075890

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