漫才の頂点を決める決戦『M-1グランプリ』(ABCテレビ・テレビ朝日系列)が今年も開催。プロ・アマチュア問わず「とにかく面白い漫才」を基準とする審査のもと、最も面白い漫才師が決まるとあって、今年も総勢5,040組が名乗りをあげ、熾烈な戦いに臨んでいます。

ラフマガでは、12月22日(日)に生放送される決勝戦を前に、歴代優勝者へのインタビューを実施中。

今回、話を聞いたのは『M-1グランプリ2009』王者、パンクブーブー・佐藤哲夫。それまで何度も準決勝に顔を出していたものの、なかなか結果が出ず、結成9年目での快挙でした。今年の『M-1』は現時点で決勝進出が決まっている9組中、7組が初出場と新顔ばかり。彼らと同じく初の決勝で結果を残したパンクブーブーの頭脳・佐藤は、当時どんな心境だったのか、詳しく語ってもらいました。

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M-1で決勝に行かなければ芸人を辞めていた?

――まずは、決勝が決まったときのことを振り返っていただけますか?

(優勝する)前の年にめちゃめちゃウケて「完全に決勝へ行った!」と思ったのに行けなくて……。翌年もう1回そのネタで挑戦したいと思ったんですけど、同じネタをやるわけにはいかないじゃないですか。だから、自分の中でベースはありつつ、1年間ネタを練り込みました。

それまでは、面白いネタが出来たと思ってバッと出していたんですけど、ネタの練り込みとか稽古量が足りなかったし、準決勝でウケてはいたけど「自分たちには、足りないところがあったんだな」って思っていました。そうやって、コンテストに向けて対策を立てたので「報われたな」っていう実感はありましたね。

――よく言われる「競技用漫才」に寄せていったんですね。

そうですね。決勝に行くまでは、毎年そのシーズンで作った新ネタの中で面白かったものを1、2か月の間で調整するくらいだったんですけど、優勝した年は、前年度に負けた瞬間から練り込み始めたというか……。対策の仕組みは、NSCやYCC(クリエイターやスタッフの養成校。現NSCビジネスコース)の授業でしゃべっていますので、もしよかったらそちらをご覧ください(笑)。

――相方の黒瀬純さんとはネタ合わせ中に何か話し合ったことはありますか?

ずっと(決勝に)通らなかったときに黒瀬が、『M-1』後テレビに出たときのために、仁(にん=ひとがら)というか、キャラが立つものを作ろうよって言っていたんですよ。ただ僕は、『M-1』の10年でダメなら芸人を辞めようと思っていて(当時は結成10年以下のコンビが出場対象)、(島田)紳助師匠も「踏ん切りをつけるための大会」っておっしゃっていましたし、そうだなとも思っていたので、黒瀬には「その後のことを抜きにして、好きなように作らせてくれないか?」って頼みました。ちゃんと伝えたら理解してくれたので、割と自由にやらせてもらいましたね。

ただ、ネタの中で「あれじゃちょっと怒りにくいから、もう少しヒドい口調のボケにしてくれ」とか「ここを早めてくれないとヒートアップしにくい」とか、そういう注文はありました。それまでは2人で話し合っていたんですけど、優勝した年は話し合いをほとんどしていないです。リクエストをいただいて、家に本を持って帰って「これでどう?」、「これじゃない」ってなったら別のパターンに……って変わっていきました。

笑い飯が100点を獲得…そのとき哲夫は?

――当日の出番は8番目。その前に笑い飯さんの「鳥人」ネタで、紳助さんが100点をつけました。プレッシャーに感じたりされましたか?

そのときは他の人を見る余裕がなかったと思います。人生の中で一番緊張したんじゃないですかね。普通にえずいたり、ネタ合わせしていても、普段噛みようがないところで噛んじゃったり……。

ただ、笑い飯が100点出したって聞いたときはちょっと安心したような気がします。点数どうこうじゃなくて、純粋に笑いを獲りにいきたいってスイッチが入ったので楽になりました。周りとくらべて勝つというよりは、俺らがウケて「あいつら面白かったね」って印象に残ってくれれば、何位でもいいやって。そういう気持ちに切り替わったんで、逆に良かったのかなって思います。

――審査では、ダウンタウン・松本人志さんらから高評価を受けましたが、当時はどんな心境でしたか?

ぶっちゃけ言えば、そのときよりも後にDVDになってから見返して、感じましたね。どういう評価をしてくれたのか。

本番では、とりあえず1本目のネタがウケて終わった安堵感と、いかにネタ終わりの絡みで爪痕を残せるのか……って考えていたので、ぼんやり「褒めてくださっている」って思うくらいで、内容までは理解できていなかったと思います(笑)。

――最終決戦では満票で優勝しました。大きく芸人人生が変わったのでは?

僕はスローテンポな人間なので、じっくり考えて、自分の中で噛み砕いて調整したいんですけど、(優勝したことで)急にたくさん仕事が入って、自分が何を目指して頑張っているのか分からなくなりました。ずっとフワフワした状態で、逆にお笑いをやっている感がなかったですね。

ご飯食べられなくなったら困りますけど、今の方がいいペースで仕事ができているなって思います。こんな風に考えられるようになったのも、若手のときにそういうものを経験したからなんだろうなとは思います。

哲夫が語る『M-1グランプリ2019』注目の芸人は?

――今年の『M-1』についてもお聞きしたいです。準決勝メンバーで気になる存在を教えてください(インタビュー時は準決勝直前)。

仲の良さとかもありますから(笑)難しいですよね〜。ただ、かまいたちとか和牛とかは劇場で見させてもらうと完全に仕上げてきていますし、『M-1』がどういう大会か分かっているなって感じます。

そこに、優勝争いに絡んでこなかった組がどうくるかってところですね。今年のネタはどうなのかは分からないですけど、(昨年決勝に進出した)マヂカルラブリー、見取り図が、注目されるネタとかじゃなくて、勝ちに来るネタをやってくれたら面白くなるなって思います。今までテレビで見ていなかった組だと、ミルクボーイとかも面白いですね。あとはアインシュタインとかもいるか。(アインシュタインは)もうベテランだからな〜。

――ラストイヤーが15年に伸びていますからね。

面白いときですよね。昔は10年でしたけど、その頃って脂が乗り始めの時期だと思うんですよ。でも今の『M-1』は、15年なんで、円熟味を出してきている組もでてくるわけです(笑)。だけど、芸歴5年未満にしかない勢いっていうのもあるんで、「どちらが勝つのか?」っていう見方ができると思います。芸歴が15年開くとその差が歴然としてくるんですよ。だからこそ分からないところではあります。

――準決勝と決勝へ行くネタに違いってあると思いますか?

準決勝って、1日に何十組もネタをやっているじゃないですか。それは機械で笑い量を測っているわけじゃなくて、人が見ているので、どんなにウケても、何のネタをやっていたのか、はっきり思い出せないヤツは決勝に行かないと思います。結局オンリーワンになることが大事なんじゃないですかね。

でも、たまに特別なことをしているわけではないのに決勝に行く組がいるんですよ。それは圧倒的にウケている人たちです。「変なことをしろ」とかじゃなくて、印象に残ったネタをやっていたかどうかの差だと思います。

――難しいかもしれませんが、出場者にアドバイスをするとしたらどんなことがありますか?

普段から一緒にやっているような子らばっかりなんで、アドバイスもくそもないです。ただ、「緊張して得することは何もないよ」とは思います。普段通りは出せないと思いますし、俺ももちろん出せませんでしたけど、いつも通りに近いことをやれた人が勝つと思います。

――決勝経験があるが故に感じることですね。

準決勝に残る人たちはドッカンドッカンとウケている人たちですから、あとは運じゃないですかね。普段から困っている人がいたら助けてあげるとか、「徳を積む」ってことにかけるのも手なのかなと思うんですよ。

――え(笑)?

実力は十分だと思うので、あとで神様が当日「お前らが一番ハマるようにしてやろう」って思うような人であれと。お年寄りがいたら席を譲って、迷子がいたら一緒に探してあげて……っていうようなね。僕から言えることはそんなものです(笑)。

 

『M-1グランプリ2019』決勝は12月22日(日)に放送されます。果たしてどの組が栄冠を勝ち取るのか? ぜひ、その目で確かめてください!

M-1グランプリ2019

<決勝>『M-1グランプリ2019』
放送日時:12月22日(日)午後6時34分~10時00分
ABCテレビ・テレビ朝日系列24局 全国ネット生放送
司会:今田耕司 上戸彩
審査員:オール巨人 上沼恵美子 サンドウィッチマン・富澤たけし 立川志らく ナイツ・塙宣之 中川家・礼二 ダウンタウン・松本人志(50音順)
<決勝>進出者:インディアンス オズワルド かまいたち からし蓮根 すゑひろがりず ニューヨーク ぺこぱ 見取り図 ミルクボーイ +1組(敗者復活戦にて決定)
<決勝>ネタ分数:4分

<敗者復活戦>『M-1グランプリ2019 敗者復活戦 ~決めるのはアナタの1票!!~』
放送日時:12月22日(日)午後1時55分~4時25分
ABCテレビ・テレビ朝日系列24局 全国ネット生放送
開催場所:東京港区・六本木ヒルズアリーナ
<敗者復活戦>ネタ分数:4分

 

『M-1グランプリ2019』インタビュー

【公開予定】

12月16日(月) インディアンス(2019年大会決勝進出)
12月17日(火) ミルクボーイ(2019年大会決勝進出)
12月18日(水)  見取り図(2019年大会決勝進出)
12月19日(木) すゑひろがりず(2019年大会決勝進出)
12月20日(金) かまいたち(2019年大会決勝進出)
12月21日(土) NON STYLE・石田(2008年大会優勝)

 

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