インパルス・板倉俊之【原作】×武村勇治【作画】のコンビがおくる禁断のノワールアクション『マグナレイブン』のコミックス第1巻が3月5日(火)に発売されました。

ある事件によりボクシングの夢を絶たれた青年・浦瀬飛月が、非合法のヒーローとして新たに生きる道を見出し、悪によって引き起こされた問題を暴力によって解決する禁断のバイオレンス・ノワールアクションである本作。今回は、その魅力や創作の秘密について、原作者本人である板倉自身にインタビューを敢行しました。

「マグナレイブン」は漫画でやるのがベストだと思った

――今回漫画『マグナレイブン』の原作を担当しようと思ったのはなぜですか?

過去に(自作である)『トリガー』と『蟻地獄』という作品が漫画になってるんですけど、それは元々小説として出して、それが漫画化されるという流れでした。

去年出した『月の炎』っていう小説は、小説で出すのが一番適していると思ったんですけど、今作に関しては、アクションシーンも多いし、男性向けな雰囲気もあるので、最初から漫画で出すのがベストなんじゃないかと思って。そこで『トリガー』と『蟻地獄』で作画をやってもらった武村さんにストーリーを話したら「全然やりたいです」と快諾してくれて、そこから出版社が決まって、という流れなんですよね。

だから、漫画の原作のみを担当するのは、実は初めてなんです。『トリガー』の中に、いくつか小説のなかに入ってないエピソードを、脚本を書いて渡して漫画を描いてもらったことはあるんですけど、それを除くと“ケツ(最後)”まで書いてない状態で始めるのは初めてで。

――今回、漫画の原作を実際やってみて、小説を書くこととの違いは何か感じましたか?

書き方が根本的に違うんですよね。小説の場合は視点人物を決めて、その人の目線で書いていくんですが、漫画の脚本の場合は絵がありますから、主人公と脇役の会話のシーンでも、お互いがそれぞれ思っていることを一緒に入れたりできるんで、どっちかっていうと俯瞰の感じで書いても伝わるというか。

――原作は脚本のような形で書かれるんですか?

そうですね。小説だったら文章そのものが商品になっちゃいますけど、今回、僕の脚本自体は商品じゃないから「このアクション、実際説明します!」とか、主人公の衣装も「※実物あります」などのコメントを書き込めますし(笑)。家の見取り図みたいに、小説だったら文章で描写しないといけないところも「ここは絵で描いてお見せします」とか(笑)、そんな小説では難しい伝え方ができるのが嬉しいですね。

――そんな感じで伝えて、それが絵になって現れるなんて楽しそうですね!

武村さんは大変だと思うんですけど、僕は楽しいんですよ(笑)。

以前、武村さんが『花の慶次』のスピンオフの『義風堂々 直江兼続 -前田慶次月語り-』っていう作品を描かれてたんですけど、鎧とかの線がめっちゃ細かったんです。

そこで例えば、「何千人もの兵に囲まれる〇〇」って、原作の人は1行で書くけど、作画の人は「これは何本線を書くんだろう!?」って焦るじゃないですか。戦国モノはカッコいいし楽しいだろうけど、そんなタイミングで『トリガー』の話があったらしく、「ああ、現代モノをやりたい」という思いがあったみたいで。

――「もう鎧を描かなくてすむ!」みたいな(笑)

(笑)。でも、僕はアイデアでクオリティを下げちゃいけないし、武村さんは画力でクオリティを下げちゃいけないので、僕は「これ増やしたら武村さん描きづらいかな」という変な配慮は一切ナシで脚本を描いています。武村さんがどう思ってるかはわかりませんが、もしかしたら「わ~、毎回この装備描くんかい!」って思ってるかもしれませんね(笑)。

――作画の武村さんってどんな方なんですか?

丸坊主なんで、最初そのスジの人かと思ったんですけど(笑)、話したらめっちゃいい人でした。武村さんのすごいところは、作品や掲載誌によって描き方を柔軟に変えられるところなんですよ。最初は『北斗の拳』のような、“ゴリゴリの漢”みたいな作画が得意な人だと思ってたんですけど、『蟻地獄』ではちょっと線を変えたりしてて。だから今回も「え、おんなじ人が描いてるの?」ってぐらいケンシロウ感がないんです。その違いはぜひ、『蟻地獄』や本作を見比べて体験してほしいですね。

怒りや違和感を「エンターテイメント」として爽快に見せたい

――ところで、今作の主人公は非合法のヒーローですが、板倉さん自身はこのようなヒーローに憧れがあるのでしょうか。

まぁ、“力”に憧れない男はいないんじゃないですかね。

――警察って、基本は事件が起こってからじゃないと動けないですよね。だから、非合法とはいえ事件を未然に防ぐことができるヒーローなら、本当に世の中にいてほしいと思います。

そうなんですよ。それは警察の視点からいうと「しかたない」ですよね。だからせめて、僕のつくる世界のなかでは救いたいっていうか。例えば、事件のニュースを見ても「ここにこういうやつがいたら、絶対防げたのにな」とか悔しく思うんですよ。それはドロドロした怒りかもしれないし、理不尽に対する違和感なんでしょうけど、それをエンターテイメントにして爽快に見せられたらいいなと思うんですよね。

――確かに、悪役が痛い目に遭うシーンには心がスカッとしました(笑)

だから、一概に「暴力反対!」って言えない部分もあるというか。説得しても聞いてくれない人って、いっぱいいますし。もちろん、正しいほうがより力を持っていれば問題は起きづらいですよね。子どもや女性が襲われたときも、襲われる方が強ければ身を守れるかもしれないですけど、そうじゃないから武力で守る人が必要だって話があるわけですし。

「作品をつくる」ことが好き

――漫画の原作や小説を書く作業と、お笑いのネタを書く作業は近いものなんですか?

いや、もう全然違いますね。パソコンを使うっていう共通点しかないです。コントっていうのは、“笑いを起こすための装置”で、「普通はこうするよね」という言動をスライドさせて笑いにする、といった作り方が多いんですけど、言いたいことやメッセージを込められるわけではないし、どっちかっていうと日常生活のパロディみたいな要素が強いですよね。

一方、物語を考えるときは本当にゼロからのスタートです。だから、それぞれに魅力が違うものだと思ってます。

――お笑いのネタをずっと作っていると、全然違うこともやりたくなるみたいな?

そうなのかもしれないです。たぶん“作品をつくる”っていうことが好きなんだと思うんですよね。「残るものをつくりたい」という気持ちが強いんだと思います。

いつかボクシングが自分の作品に出てくるんじゃないかと

――今作の主人公は元ボクサーという設定ですが、板倉さんもボクシングをされてたんですよね。

そうなんですよ。僕は「作者の人生が作品に投影される説」に対して素直になれなかったんですけど、でも結局それには抵抗できないですね(笑)。

ボクシングジムには10年ぐらい通っていて。最初の1年ぐらいはがっつりやって、その後は運動不足解消を目的に通いました。普通のジムでは続かないとわかってたから、技術を会得できるような本格的なジムに通いましたね。別に人を殴るわけじゃないけど、ボクシングの試合を見るときにも見る目が変わってきますし。

そのことと、あともう1つこの原作のインスピレーションになった出来事があって。

一時期、YouTubeで「おそロシア」というワードで検索すると、ロシア人同士のガチの喧嘩の動画がヒットすることがあって、その動画が芸人の間で流行ったんです。僕は、品川(祐)さんに教えてもらったんだっけ? ホントの殴り合いの喧嘩とかがアップロードされていて、とにかくこれがめちゃめちゃ面白いんです。

今回の作品はその2つが結びついたのかもしれません。その喧嘩動画がこれだけ再生回数を伸ばすということは、エンターテイメントになりそうだと思って。

――自分のなかにあるものが作品に反映されるのは自然だと思いますよ。やっぱりボクシングに魅力を感じていて、好きだからこそ漫画でそのカッコよさを表現できたらいいなっていう気持ちもあったんじゃないですか?

ボクシングジムに行って、ボクサーの人たちに触れていると「こんなに強い人たちでもここまでしかいけないんだ」って思うことが多いんです。ならば世界チャンピオンクラスなんて異次元の超人で、バケモノ級にすごいんだって思うんですけど、日本ではホントに数人しか有名になれない。しかも、「この階級のこのチャンピオン知ってるか」って訊いたら、世界一なのに知られていない。「なんて報われない仕事なんだろう!」って思うわけですよ。アメリカと違って多額のお金がもらえるわけじゃないし。

そういう意味で、やっぱり『あしたのジョー』のような、“報われないカッコよさ”みたいなものに惹かれてるのかもしれないですね。だから僕はボクシングがいつか自分の作品に出てきちゃうんじゃないかとは思ってました(笑)。

――なるほど。板倉さん自身がなんとなく感じた魅力が漫画でも描かれているんですね。そういえば、今回はコミックス1巻の発売を記念して“スペシャル実写動画”も作成されたとか。

そうなんです。「漫画を読んだあとにURLを開いたら、その戦闘シーンの動画が上がっている」という企画をやりたくって。フィクションなんだけど、現実に食い込んできてる感じを出したかったんです。なので、漫画を読んだ人は、作中の迫力そのままの実写版『マグナレイブン』のアクションシーンをリアルに体感できるので、お楽しみに!

――最後に、ラフマガ読者へメッセージをお願いします。

面白くてカッコいい作品になっているので、ぜひ読んでほしいです!

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

インパルス・板倉が原作で話題の『マグナレイブン』は、全国の書店やネット書店で好評発売中です。非合法だけど爽快なダークヒーロー・浦瀬の活躍に、夢中になること間違いなし! ぜひ読んでみてくださいね。

『マグナレイブン1』

著者・作画:武村勇治 原作:板倉俊之
定価:723円(税込)発売中
発行:ヒーローズ
発売:小学館クリエイティブ