2月26日(火)、大阪・天満天神繁昌亭にて『第117回 創作落語の会』が開催され、桂文枝が290作目となる創作落語『朝霧のしのび逢い』を披露し、会場には多くの観客が詰めかけました。

昨年12月30日(日)に開催された第116回から、約2ヶ月。今年1回目となる『創作落語の会』では、桂三金、桂三歩、桂三ノ助、昔昔亭A太郎(せきせきていえーたろう)、桂文路郎らも出演し、会場を大いに沸かせました。

弟子たちがバラエティ豊かな噺で「繁昌亭」を沸かす!

まずはトップバッターの桂文路郎が登場し、ある会社の社長と社員が様々なハラスメントについて話し合う『ハラハラ』を演じます。耳馴染みのあるものから初めて聞くものまで、次々に飛び出すハラスメントに会場から笑いが起こっていました。

続いて、「繁昌亭に出演させていただくのは初めて」という挨拶とともに登場したのは、東京からはるばるやってきた昔昔亭A太郎。シュッとした風貌とよく通る声で、マクラから会場をしっかり笑わせ、本日の演目『むすびな』へ。

工場で働く主婦たちの何気ない会話で進んでいく噺で、テンポのよさや言葉選びの面白さで臨場感を演出し、会場を盛り上げました。

桂三ノ助は、自身が神戸出身であることに触れ、昨年オープンした神戸新開地喜楽館(きらくかん)の話へ。館長補佐に任命されて忙しいらしく、「落語してる場合じゃない」とひとボケし、笑いを誘います。

そして、戦国大名が登場する創作落語『GUNSHI』がスタート。まずは竹中半兵衛、黒田官兵衛の会話から噺が始まります。戦国時代をベースに過去と現在、虚構と現実がミックスされたストーリーには、有名な武将も続々と登場。奇想天外な噺に、観客はすっかり魅了されていました。

文枝作の『世界ふしぎ体験!』にチャレンジしたのは桂三歩。登場するなり、ネタに合わせて黒っぽい着物を着てきたものの、実は夏物で生地が薄いので寒いと告白し、観客を笑わせます。

さらに、大阪ローカルのエピソードでしっかりと笑わせてから、落語へ。テンポのいい夫婦のやりとりから始まるこの噺。どこにでもありそうな中年夫婦の会話や誰もが思い当たるテーマに、会場も笑ったり、うなずいたり。登場人物それぞれのキャラクターをしっかりと演じ分ける三歩の芸も見事でした。

中入り後に登場したのは桂三金。まずは体重、体脂肪を明かし、笑いをゲット。自身の体型の話から相撲部屋での体験など、マクラでもしっかりと盛り上げます。演目は『おばあちゃんの約束手形』。元力士が引退後の職場で奮闘する噺を熱演。その愛嬌のある姿と、語り口が会場を惹きつけていました。

文枝、記念すべき290作目は「朝霧のしのび逢い」

トリはもちろん文枝。高座に姿を現すと、会場からは大きな拍手が起こります。まず、今回の噺が290作目になることを告げたあと、今回はネタおろしなので展開が読めないと言い、「ほとんどはお客様次第」とひとボケします。

最近体験した爆笑エピソードなども紹介しつつ、本命の『朝霧のしのび逢い』へ。早くに妻を亡くし、長年忘れられずにいた男が、78歳で新しい恋を見つけます。そのことを友人夫婦の元へ相談に行き……という噺です。

恋が実るかどうか、相手の詳細や男の気持ちについての会話が続きますが、様々な事実が明かされる度に笑いが起こり、観客もすっかり文枝の語る噺の世界へとのめり込んでいきます。恋する男の姿に爆笑が続くなか、まさかのオチに、会場は笑いと拍手に包まれました。

終了後に舞台上で「やっと290作」と話したあと、「これは次に行けそうな感じがする」と手応えを掴んだ様子を見せ、その姿に会場からは大きな拍手が起こりました。

これからもやれるネタが一つ増えた

終了後の囲み取材では、まず290作目の感想として、「時間がないなか、思ったことはなんとかやれた」と一言。さらに今回は年齢に合わせた噺を作ろうと思ったそうで、「これからもやれるネタが一つ増えた」と、ホッとした表情を浮かべました。

とはいえ、「本当は290という節目なんだけど、なんかバタバタしながら迎えた感じ」と慌ただしかったようで、「ちょっと粗い部分もあったが、お客さんがとても暖かかった」と振り返りました。今作はどこからインスピレーションを得たのかという質問には、妻を亡くした知人が身近にいたことや、自身が通っているスポーツクラブで耳にした話などが基になっていると明かしました。

300作目の完成は来年のオリンピックイヤー!?

大きな区切りとなる300作目は、「できればオリンピックイヤーを目指してやりたい」と明言。来年には華々しくいけたらと希望を語りますが、300作目のテーマについては、「今は淀川区のネタで悩んでいるので……」と笑わせました。

さらに、先日行われたライブや、笑福亭松之助師匠との思い出などにも言及。そしてこれからについては「新しいものも作らないといけないけど、過去のものを練り上げていくことも必要なので、ちょっと大変やなぁ」と話し、単調にならないよう、これまでのやり方を壊しながら新しいものにチャレンジしていきたいと希望を語りました。

大台となる300作までいよいよあと10作と迫った文枝。これから発表される新作落語はこれまでの集大成ともいえるはず。どうぞお見逃しなく!