雪辱のW杯から4年、日本ラグビーが快進撃を続けている。

920日のロシア戦を皮切りに、28日のアイルランド戦では19-12と苦しみながらも勝利を手にし、そして105日のサモア戦では4トライを決め、ボーナスポイントも獲得するなど、大躍進中だ。

ラフマガでは、W杯プール戦最終戦直前特別企画として、TBSドラマ「ノーサイドゲーム」にも出演した、吉本きってのラグビー芸人・笠原ゴーフォワード、そして自身もラグビー経験者で今回のWDAZN配信の構成も担当する構成作家の遠藤敬氏との対談を決行。

笠原ゴーフォワードは、日本代表の司令塔として現在活躍中の田村優選手とは大学時代の後輩でもあり、いまでも一緒に食事に行くという間柄だという。そんな笠原しか知りえない田村選手の素顔、そして「ノーサイドゲーム」の撮影秘話を聞いた。

ラグビー名門校出身ながら芸人、笠原ゴーフォワードになるまで

明治大学生の頃(中央が笠原)

遠藤敬(以下、遠藤):まずはご自分のプロフィールを聞かせてください

笠原ゴーフォワード(以下、笠原):僕は福岡県出身で、小学3年生の頃からラグビーを始めました。中学のときに九州選抜で、ラグビーの全国大会で日本一になりまして。高校はスポーツ推薦で筑紫高校に進学しました。高校ではキャプテンも努めさせていただきました

遠藤:おお、すごい。筑紫高校は名門ですよね。ただね、福岡には東福岡という強豪がいますからね

笠原:そうなんです。僕は1年生の頃から試合に出させてもらっていたんですが、毎回決勝で東福岡に負けていて。1年生のときは1点差、2年生のときは5点差、3年生のときは7点差で負けちゃって、なので一度も花園には出られなかったんですけど。実際、僕が1年生のときに東福岡は全国優勝もしています

遠藤:じゃあ相当実力があったということですよね。高校時代から、しかもキャプテンでしょ?

笠原:実は高校生の頃の九州選抜でもキャプテンを務めていまして。もちろん東福岡からきている選手もいる中で

遠藤:芸人になってる場合じゃないですよ! 高校のあとは?

笠原:周りにもよく言われます。なんでいま芸人の道にいるのって(笑)。高校卒業後は推薦で明治大学に入学しました。ポジションはリーチマイケル選手やピーター・ラブスカフニ選手と同じフランカー。4年生のときにレギュラーになりましたが、ベスト8で敗退しました。そのときの相手は筑波でした

遠藤:当時の筑波は強かったですね。帝京筑波の2強。関西では天理。まさにいま、日本代表でバリバリ活躍している選手たちがいる世代ですよ。選ぶ道が少し違っていたら日本を背負っていたかもしれないレベルです。大学を卒業した後は?

笠原:ラグビーは辞めて2年間社会人として働いて、無事にNSCに入学しました(笑)。芸歴5年目になります

遠藤:僕はNSCで講師をしています。通常授業と別に各講師が選ぶ「選抜クラス」があるのですが、僕の「選抜」に笠原君は入っていました。笠原くんが明治大学出身と聞いて、ワクワクドキドキしていましたが、それとはもちろん関係なくネタは冷静に見ました。それくらい、当時のネタはしっかり作られていて面白かった。

日本の司令塔、田村優選手の素顔とは

写真上段左から:田村優選手(キャノンイーグルス)、笠原ゴーフォワード、千布亮輔選手(日野レッドドルフィンズ)、下村健さん

遠藤:いま、まさにW杯の真っ最中ですが、この取材をしているいまは、プール戦の最終戦を控えた前々日ですが(取材日は1011日)、次は因縁のアイルランド戦ですね。W杯は見ていますか?

笠原:もちろん、見ていますよ! ありがたいことに、パブリックビューイングやYouTuberのはいじぃさんと生配信で一緒に解説しながらお仕事として観戦させていただいています。この前のアイルランド戦のときは、NHK静岡さんに呼んでいただき、パブリックビューイングを見ながら解説させていただきました。最後一言お願いしますって言われて、芸人として行っているんで、ここは締めなくちゃいけないところだったんですが、めちゃくちゃ感動してしまいまして。「言葉出ないですね」って。一番やったらいけないことをやっちゃいました(笑)。かたや試合を見たら堀江さんはしっかり話されていました。

遠藤:(笑)。明治と言ったら日本代表の司令塔、田村優選手の出身校でもあるわけですが、どういう関係ですか?

笠原:1個上の先輩なんです。大学生の頃から仲良くて、一緒に飲みにも行きましたし、それはいまでも続いています。W杯初戦の5日くらい前にも優さんから「今日何してるのって」LINEがきました。でもその日ちょうどバイトで断っちゃいました

遠藤:バイトで!? お仕事ならまだしも勿体無い。まぁでもそれくらい可愛がられているということですね

笠原:優さんが沖縄にラグビー教室の仕事に行くときも一緒に行こうって誘ってくれて

遠藤:それは行ったんだ(笑)。ちなみに沖縄といえば、田村選手のルーツも沖縄ですよね?

笠原:はい、お母様のご実家が沖縄で。顔立ちもですが、性格も沖縄まんまです。ご飯に行こうってなって何時にどこどこ集合って言われたときも平気で1時間くらい遅れてきます。「優さん、いまどこですか」って聞くと、「もうすぐ着くわ」って言ってから30分はかかりますね

遠藤:田村選手は、大学時代はどんな選手だったんですか?

笠原:天才プレーヤーだなという印象でした。僕が入学したときは2年生で既に試合に出られていました。大学の頃は割とセンスに任せたプレイが多くて、試合中もワガママというかまさに「キング」でした。でもある種、ゲームメイクをする人はそういうカリスマ性も必要ですし。自分のプレーにはこだわっていて、自分の納得いかないプレーができないと、表に出ちゃうくらい。明治自体も優さんのチームと言っていいくらいだったので、優さんのコンディションに左右されることもありました

遠藤:大学時代、近くで過ごしていてすごいなと感じたエピソードはありますか?

笠原:とにかく負けず嫌いだと思います。当時のラグビー部は全員寮生活で1年から4年までのそれぞれ一人ずつが一緒という部屋割りでした。僕と優さんは別の部屋でしたが、あるとき部屋に遊びに行ったら、ウイニングイレブンを僕の同期とプレイしていまして。その同期に負けちゃったんですね。そしたらバーンてリモコン投げて、そこから1週間その同期と口をきかないという。ただのゲームなのに、それくらい負けず嫌いでした(笑)

遠藤:(笑)。今回のW杯では、司令塔としてはもちろんですが、キッカーとしても期待されていますね

笠原:僕はトライも見たいですね。優さんは周りを活かすことがすごく上手な人なので、自らはあまり前に出ないんです。でもアイルランド戦では自分で持っていく場面も多かった。あんなにチャレンジしにいく優さんは新鮮でしたね。パブリックビューイングで僕があまりにも「優さん! 優さん!」って言うからお客さんも一緒になって応援してくれてました

写真は左から:笠原ゴーフォワード、田村優選手(キャノンイーグルス)、宮前勇規選手(NECグリーンロケッツ)、杉本博昭選手(クボタスピアーズ)

遠藤:(笑)。田村選手はそのままラグビーの道を歩んでいく一方、後輩の笠原くんは吉本の芸人になって。そのときの田村選手の反応はどうでしたか?

笠原:めちゃくちゃ笑ってました。「めっちゃ面白いやん」と。実は無限大ホールや神保町花月にも僕のライブを見に来てくれているんですよ。身体が大きいので椅子2個くらい使って見てくれてました。あまりにも大きいですし、オーラもすごいので目立ってましたね(笑)

遠藤:目立つ人が客席に座っているなと(笑)。それがいまや日本の宝ですからね。日本代表として活躍している田村選手を見て、変わったなと思うところはありますか?

笠原:優さん本人に聞いたんですが、社会人になって日本代表に招集されて、2015年に登録メンバーになって初めて日本代表の環境に触れたとき、自分の中の意識が変わったそうです。それからはオフの日でも毎日34時間は時間を作ってキックの練習をしていますね。僕らと一緒に飲んでどんなに遅くなっても関係なく朝7時には起きて、誰よりも信じられないくらい練習しています。大学時代は天才肌だったし、どちらかというと努力嫌いなイメージでしたけど、日本代表に行ってから本当に180度変わりましたね。

遠藤:努力の末にいまの地位があるわけですね。前回のW杯はエディー・ジョーンズHCの元、24年ぶりの快挙を達成。その裏にはかなりの血のにじむような努力があって、選手も家族やプライベートを犠牲にしたと聞きましたが、当時、田村選手は先発ではなかった。今まで一番手を突っ走ってきた人がリザーブでしたが、そのときの田村選手の印象は?

笠原:優さんは後半から出場されていたのですが、僕も当時「なんで先発じゃないんですかね」って聞いたんです。でも優さんは「自分は後半から出てゲームを動かしていくポジションだから」と、自分の中でちゃんと役割を見出していました。結果も出していましたし。

遠藤:大学時代、キングと言われていたワンマンプレイヤーからチームの一員として日本代表に貢献したんですね

笠原:優さんは日本代表がとても好きなんです。リーチマイケル選手とは同学年ですごく仲が良くて。「あの人が日本の魂を持って熱い心で戦っているから俺も一緒に頑張りたい」と言っていて。実は優さんに「俺の後輩」ってリーチマイケル選手にご紹介していただいたことがあるんです。その時に向こうから握手してくれて。手がめちゃくちゃ温かくてデカいんですよ。握手してもらっただけで泣きそうになるくらい感動しました

遠藤:今後、神様と呼ばれるだろう選手ですからね。野球で言ったら王監督、長嶋監督のような存在ですからね。プライベートの田村選手は?

笠原:お酒がめちゃくちゃ強いんですよ。沖縄がルーツなのでお決まりかって言うくらい泡盛を飲みますし、居酒屋も沖縄系が好きですね。優さんの飲むペースが早いので、周りの人もつられて飲むので毎回ベロベロになります。優さんは必ずラムネを持っているんです、お酒を分解するからって。ないときはコンビニに買いに行くくらい気に入っているみたいで。テンションは高くなるけど潰れないですね。恥ずかしがり屋だからボケたりもしない。そしてけっこうな寂しがり屋なんですよ。飲んで、よし解散、てなったときも僕だけはガチッと掴まれて、半強制的に家に連れてかれて。その日は優さんの家で一緒に寝るという

遠藤:(笑)。期間中は飲んでないんですか?

笠原:ないですね。初戦前に飲みに誘われたとき僕が「優さん、頑張ってくださいね」って言ったら、「W杯終わったら沖縄行くから準備しとけよ」とは言われました。ちょっと寒い沖縄になっちゃうと思いますけど(笑)

遠藤:しばらくは沖縄はおあずけですね。日本が大快挙を成し遂げている間ですから。ちなみに田村選手以外との交流は?

笠原: 高校時代に一緒だった日野剛志ですね。フランスのトゥーロンという名門チームにいま所属しているのですが、一回だけスタートから試合に出ましたがいまはリザーブ選手です

遠藤:日野選手は日本代表候補だったけど代表から漏れたことにより、トゥーロンという名門に行くことで、新しいチャレンジとアピールをしている選手ですね。もしかしたら途中呼び戻されることもあるかもしれない。高校・大学の同期といえば秦一平選手はどうですか。実は僕は秦選手が特に好きで、小柄なのにすごいなと。あの体型でトップリーグに行くのは奇跡だし、ジャッカルとか大きくて強くないとできないのに

笠原:この前の静岡でやらせていただいたパブリックビューイングの解説のお仕事で秦と一緒になることができまして。僕はお笑い芸人のコメンテーター、秦は現役ラグビー選手として。仕事で再会できたのは嬉しかったですね

 

遠藤:ちなみに芸名のゴーフォワードの由来は?

笠原:明治のキャッチフレーズで「前へ」という有名な言葉があるんです。明治の親父とも言われている伝説の北島忠治監督の言葉なんですけど、それを英語にさせていただきました

遠藤:「横の早稲田・縦の明治」と言われるくらい、当時の往年のスタイルで、いまはオールラウンドになりつつありますが、明治は前へ前へのフォワードのチームでしたよね

笠原:「ノーサイドゲーム」の収録で菊谷崇さん(2011W杯キャプテン、大阪体育大学出身)にお会いした際に、「あれ? タイダイ(大阪体育大学)?」「いえ、明治です」ってやり取りがありまして。明治のキャッチフレーズは「前へ」ですが、大阪体育大学はそのまんま「ゴーフォワード」なんですよね(笑)。でもこの名前のおかげで菊谷さんとも交流ができました

「ノーサイドゲーム」の収録現場でラグビー界に貢献?!

 

遠藤:最近は「ノーサイドゲーム」に出演されたんですよね

笠原:ありがたいことに。TBSドラマ『ノーサイドゲーム』に出させていただきました。ラグビーのドラマがあります、誰か出たい人いますかって聞かれて、もちろん出たいですと。書類選考を通って、次のオーデイション会場に行くことになったのですが、何かしないと爪痕が残せないと思って明治のユニフォームを着て行ったんですよ(インタビュー時着用)。それがめちゃくちゃ演出の福澤さんにハマって。実は福澤さんが元々慶応のラグビー部出身で。当時は明治大学が相当強い時代だったので明治に対してものすごいリスペクトがあったようなんです。そこに僕がこのユニフォームで登場したものだから「おお、明治か」ってなって。そこからはトントン拍子に決まりました

遠藤:そのユニフォームが役立ったじゃないですか!

笠原:もし別の服装で行っていたらいまの自分はないですね。先代に感謝です

遠藤:ドラマの収録はどうでした? 俳優業としては初めて?

笠原:実は以前にも力士の役で、ほぼエキストラなんですけど、出させていただいたことがありましたが、役名をもらって出演するのは初めてです。そのときとは比べものにならないくらい大変でしたね。とにかく撮影がタイトで、ラグビーシーンは色んな角度から撮ったり、同じ動きを何度もするから時間がかかってしまって完成もギリギリでした。最終話なんて2日前まで撮影していて出来上がったのは21時放送なのに20時半とかで。監督が「リアルを撮りたい」とおっしゃるので100%本気でプレーすることもありました。「ケガだけしないように、でも100%で」と。ラグビーシーンは9割方経験者が演じてらっしゃるので、廣瀬さんを筆頭にレジェンドからタックルされると、当たりがすごくて。こっちはブランクがあって、もちろん鍛えてもいなかったので、撮影終わりは34日ずっと背中痛かったですね(笑)。そのおかげで周りからは「ラグビーシーンが頭抜けてリアルだね」と言っていただけましたけど。

遠藤:それもこれも全部ラグビーのおかげですね。そろそろ恩返ししないとじゃないですか

笠原:本当にそうです。恩返しといえば、あるシーンで佐々選手(林家たま平さん)が、大泉洋さん演じる君嶋の息子、博人くん(市川右近さん)に手をかざす有名なポーズがあるんですね(左胸を拳で叩いた後右胸の前に突き出すポーズ)。実はあのポーズは僕が現場で「ゴーフォワード!」って言いながら披露していた持ちネタなんです。監督が佐々選手に撮影中に「このシーンで何かやれ」って言ったとき、佐々選手がその僕のポーズをまんまパクったんですよ。監督も笑いながら「よっしゃ! これでいこう! これはゴーフォワードのじゃないよ、もう佐々ポーズだよ」って言って。あれ、本当は僕のネタなんですよ! しかも、廣瀬さん(浜畑役)も七尾(眞栄田郷敦さん)にやっていたので、もはや僕のではなくなっちゃいました(笑)。ラガーマンといえばいかに献身的にプレイできるかが大事ですし、ワンチームの精神で目立たなくても頑張るものなので、その意味でドラマには少し貢献できたかなと思います。ラグビーのおかげで色んなお仕事もさせていただいていて、これからももっともっとラグビーに恩返していきたいですね。

遠藤:いつか、笠原くんが番組に呼ぶ立場で田村選手や他の選手と一緒に仕事ができるといいですね。最後に言いたいことは?

笠原:ブカツ!「ラガーボーイズブ!」の活動の一環なんですが、youtubeの「ラガーボーイズの逆襲」というチャンネルで、毎日ラグビーあるあるをアップしています! いまなら試合の解説とかもしています! ブカツ!の中では芸歴は一番下ですが、発言権は一番です! 是非ご覧ください!

笠原ゴーフォワード
福岡県出身、1989年5月23日生まれ(30歳)
ラグビー歴:筑紫丘ラグビークラブジュニアスクール、筑紫高校、明治大学
ポジション:フランカー、No8
(高校の同期に日本代表の日野剛志、高校と大学の同期にNTTドコモの秦一平など)
現在ピン芸人として無限大ホール等で活躍中

遠藤敬
構成作家
アメトーーク、ロンドンハーツなどの構成やNSCで講師もしている。大のラグビーファンでもある

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