9月14日(土)、富山県氷見市・ひみ花の里ドッグランにて『一ノ瀬文香講演会&動物との触れ合いinドッグラン』が開催されました。

2009年、日本のタレントとして初めてレズビアンであることをカミングアウトし話題となった一ノ瀬文香。現在は情報番組等メディアへの出演をはじめ、自治体や企業でのLGBT(※セクシュアルマイノリティの総称)の講演や、新宿2丁目にある異セクシャリティ交流バーの経営など、多岐にわたり活動を行なっています。

本講演会は小型犬が歩き回る屋内ドッグランを会場に、のどかな雰囲気のなか実施されました。

カミングアウトしたのは「不器用だったから」

もともと1人旅が趣味で、今回も2日前から富山を満喫していたという一ノ瀬。動物との触れ合いが楽しみなあまり「待ちきれなくて昨日もここに来ました(笑)」と話し、場の空気を和ませます。

また、2015年に女優でダンサーの杉森茜と結婚、その後離別したことにも触れ、失敗しても反省して前向きに生かしていくという志を持っていること、自叙伝を出版したことを明かしました。

ここから「思い込みをなるべく捨て、たくさん発見をして、周囲とよりよいコミュニケーションをとってほしい」という講演テーマのもと、ワークショップがスタート。

はじめに一ノ瀬は、LGBTやセクシャリティについて分かりやすく説明します。生物学的性と性自認、性指向、性表現はそれぞれ別のものであることを伝え、自身も子どもの頃は見た目で男の子と判断されていたことや、初恋が高校生の時であったことを明かし、参加者たちも真摯に耳を傾けます。

初めて女性を好きになった際に悩まなかったという一ノ瀬は、その理由を「幼少期から人と共感できないことが多かったから」と話し、ADHD(注意欠陥・多動性障害)だったことを告白。成績は優秀だったものの「みんながあたりまえにできることができない」ということを分かってもらえない辛さは昔から感じており、自身が同性愛者であることに気づいた際も「そんなに驚かなかった」と語ります。

カミングアウトしたことについても「よく“勇気あるね”と言われたけど、不器用なので真っすぐに生きていくしかなかった。強くなるには高い自己肯定感が必要で、ありのままの自分を認め、周囲を変える努力をすることが大事だった」と振り返りました。

風土を変えるためには制度の改革が必要

その後は、自治体のパートナーシップ制度と法的な同性婚との違いについて説明。さらに、特に地方の人ほど居場所を求めて新宿2丁目に来ることも多く、地方の過疎化の原因のひとつにもなっていることを話します。

そして一ノ瀬は、風土(人々の意識)を変えるためにも制度の改革が大事だと話し、法的に同性婚を認めていない日本と、世界の差を指摘。

さらにはLGBTの理解者であり支援者である“Straight Ally(ストレートアライ)”になるための方法を指南し、「いちばん大事なのは相手の話をちゃんと聞くこと」とし、カミングアウトされたときの対応や気をつけるべき言葉の使い方などを解説しました。

また、今は、カミングアウトをしてその人自身が願うような生活を送る人が増えてきたとのこと。一ノ瀬は「不安に押しつぶされて悩むぐらいだったらやっちゃえ!って思う。私も楽しく生活できていますから(笑)」と話し、カミングアウトに悩む人々に向けアドバイスを送りました。

最後には参加者全員で動物と触れ合い、みんなが笑顔になったところで講演会は終了しました。

多様性を認めて、みんなハッピーに!

講演会終了後、ラフマガでは一ノ瀬にこの日の感想を伺いました。

「来てくれた人たちみなさん温かくて、アンケートもすごくびっしり丁寧に書いていただいて嬉しかったです。話しているときも、うなずいたり驚いてくれたり、反応を示してくれたのでやりやすかった」と一ノ瀬は笑顔を見せます。

今回の講演について、「(『ひみ花の里ドッグラン』社長の)加藤さんが、メディアで私のことを知って講演をお願いしたいと思ってくれていたみたいです。加藤さんには、“まずその人としっかり話してから(講演を)お願いしたい”というポリシーがあるそうで、私のTwitterからお店(一ノ瀬が経営するバー)にいる時間を調べて、会いに来てくださったことがきっかけでした」と話す一ノ瀬。

その後も「何度か飲みに来てくださったあとに丁寧なメールをいただいたり、オファーして下さった後も足を運んで会いに来てくださって。観光パンフレットを持ってきてくださったり、“こういう講演をしてほしい”という話をしてくださったりもして」と、時間をかけて講演の準備を行なったことを明かしました。

講演会活動を始めたきっかけについては、「いろんなところでトークゲストとして呼ばれたり、メディアでLGBTのことや自分自身のことを話しているので、そういうのを見てお声がけいただいたんだと思います」と話し、「もっとみんなが自分らしく、それぞれの多様性を認めて生きていけたら、差別も偏見もなくなってみんなハッピーだと思っていた」と続けました。

「北風と太陽」の太陽になりたい

一ノ瀬は、2009年にカミングアウトをするまでは世の中のために何かしたいと思ったことはなかったとのこと。しかしカミングアウトを決意するにあたって、“公にカミングアウトしても生きていけるんだ”って思ってもらえたらいいなという気持ちもあったと言います。

その背景には、「周りに結構“カミングアウトしたら生きていけない”という人がいたり、中には本当に死んじゃう人もいたので、“カミングアウトして生きていける人がいるなら自分も大丈夫かも”と刺激になれば」という思いがあったのだとか。「自分の考えを押しつけるより、私の行動を見ることで、前向きになるきっかけになれば嬉しいと思った」と、自身のポリシーに従って行動したことを明かしました。

また、講演会などLGBTに関する活動でいちばん伝えたいこととして、「自分の思い込みに気付いて改善し、より良いコミュニケーションを図ることで、その人がよりよく楽しく生きられるきっかけにしてもらえれば」と話す一ノ瀬。

LGBTを取り巻く環境については「LGBTのことを“少しは知っている”とか“聞いたことがあるよ”っていう人がめちゃくちゃ増えたので、前進しているなとは思います。昔は“臭いものにはフタ”みたいな感じで、何も知らないし触れてはいけないという感じだったので」と、時代の変化を感じていると話します。

とはいえ、まだまだ課題も多いと言い、「本当に差別や偏見をしている人は、なかなか自分の思い込みを認められないと思うんですよね。なので、どうしたらそういう人に気付いてもらえるか、どうしたら認めてもらえるのかは、今も考えています」と、試行錯誤の最中であることを明かしました。

一ノ瀬自身、「絶対こうした方がいいからこうしなよ」と言われるのが特に嫌いだと言います。だからこそ、その人自身に「こうしちゃいけないんだ」とか「ああした方がいいんだ」と思ってもらわなければ意味がないと考えているのだとか。

「私、『北風と太陽』(イソップ寓話のひとつ)が子どものころから大好きなんですけど、太陽みたいに自然な形で(LGBT問題が)よくなってほしいと思っているんです。そういうのって工夫が必要で難しいんですけど、なんとかしたいなって思ってます」と、笑顔で今後の展望を語ってくれました。

また、メディアを通じ自身の行動を届け、議論のきっかけにしてもらいたいと話し、LGBTについて「差別や偏見がなくならない限りは、自分のやれることはやっていきたい」と意気込みました。

決して他人事ではないLGBTの問題。まずは皆さんも、“ちゃんと知る”ことから始めてみてはいかがでしょうか。

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