コンビとして初の漫才ツアーを開催、さらに単独でも映画監督、作家として幅広い分野で活躍する品川庄司・品川祐。彼の映画監督・品川ヒロシとしての最新作が、吉本興業と北海道・下川町の協力プロジェクトによって制作される映画『リスタート』です。

本作は、東京で夢に挫折し、故郷に帰ってきた女性が再生するまでを描いた青春ストーリー。興行収入約20億円を記録した映画『ドロップ』をはじめ、数々のヒット作を手がけてきた品川ですが、女性を主役にした映画は初めて。次々と新たな挑戦を行なう品川に、映画にかける思いや伝えたいメッセージ、最近携わっている様々な活動について尋ねました。
(8月24日(土)に取材しています)

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「30歳までに売れないと…」ヒロインに若き日の自分を投影

――今回の映画を撮られるにあたって、具体的なオーダーなどはありましたか?

特にはなかったのですが、最初、僕はスプラッターホラーを撮りたいって言ったんですよ。チェーンソーアートの町なので、「チェーンソーだったら殺人鬼がいいじゃん」って。そうしたらそれはダメだと言われて(笑)、それなら青春ものにしようかなと。

――女性が主人公の映画で監督を務めるのは初めてですか?

そうですね。これまで、不良とかギャングとか漫才とか、男っぽいお話が多かったですから。主要キャラクター以外でも、男性9、女性1ぐらいの割合で女性が出てこなかったんですけど、今回は珍しく女性の登場人物が多くなっています。

――そういった意味で、脚本を書かれる上で苦労されたことは?

今回のヒロインは、それほど女性らしくないんですよ。フォークデュオ・HONEBONE(ホネボーン)のEMILY(エミリ)ちゃんっていう子が演じていて、宛て書き(※演じる俳優をイメージして脚本を書くこと)している部分もあるんですけど、彼女はTwitterで喧嘩するくらい負けん気が強い性格で。結局青春とかっていう話になると男性も女性もあまり関係ないのかなって。

――ご自身を投影された部分もありますか?

ありますね。(品川が映画監督を務めた)『漫才ギャング』の女版みたいな感じかもしれない。今回のヒロインは28歳なんですけど、それぐらいの時期って誰しも1回いろいろ考えるじゃないですか。今、47歳になって振り返ってみると、なんであんなに30歳が怖かったんだろうと思いますけどね。

でも、当時は“30歳までに売れないと”という恐怖みたいなものが漠然とありました。たとえば、“30歳で親の仕送りもらってる”とか聞くと“ええっ!?”って思うじゃないですか。20代ならまだ許容範囲内だけど、“30にもなって”っていう感覚はやっぱりありますよね。

――当時は30歳までに売れなかったら辞めようと?

思っていましたね。ただ、俺らはちょうど28歳ぐらいで仕事が増えだしたので、“タラレバ”になりますけど、もし売れていなくても続けていたんだろうなって(笑)。じゃあ他に何ができるかって言ったら何もできなかったでしょうし。

――おそらく当時からは想像できなかったぐらい、今いろんなジャンルでお忙しくされていますね。

そういう風に言っていただけるんですけど、映画作りもお笑いも、仕事ではありながら仕事っていう感覚がないんですよ。全部趣味みたいな感じで。今回の映画はさすがにスケジュールがタイトで……いつもだったら30日ぐらいかけて撮っているものを8日間で撮らないといけないので、1日に撮っているシーン数が半端じゃなくて、大変は大変です。でも、それも逆に言えば8日で必ず終わりますからね。東京ロケは3日間あったんですけど、絶対3日で終わるって決まってるから3日間頑張れたし。下川町ロケは5日間ですけど、5日ぐらい寝なくても死なないじゃないですか(笑)。だからイケちゃうなって」

――天気が悪くても5日間って決まっているんですか?

そうなんですよ。だから祈るような気持ちですね。北海道って、夏の緑がきれいなんです。夏の北海道の良さみたいなものを撮りたいと思ってこの時期を狙ったので、雨になっちゃったら切ないですね(笑)。

下川町の景色を見ただけでほぼシナリオが出来た

――品川さんからご覧になった下川町の魅力は?

星がきれいとか空気がきれいとか……東京育ちであまり自然に縁がなかったので、そういうところがいいなと思いました。またそういうのが刺さる年齢になってきたんですよね。20代の頃は空なんか見上げなかったですから(笑)。ロケ地にきれいな川があるんですけど、周りが山に囲まれていて、緑がたくさんあって。それを見たときにこの話にしようって脚本を書き始めました。下川町の方がほかにもいろいろな場所を紹介してくれたんですけど、もう川だけで脚本が頭の中で出来始めていました。あとは、学校の校舎にも一目惚れしましたね。僕が通っていた学校の3~4倍ぐらいの(広さの)校庭で、野球部の部員が2人だけでキャッチボールをしてたんですよ。その光景にやられました。

――町の風景からインスパイアされたものが大きかったんですね。

そうですね。シナリオハンティングって言って、シナリオを書くためのロケ地取材をやるんですけど、そのシナハンの半日ぐらいでもうストーリーが決まりました。東京で失敗をした女の子が、下川町で人生をリスタートするっていう。僕、今までの映画ってあんまりテーマがなかったんですよ。“楽しんでもらいたい”が一番で、伝えたいことっていうものはあまりなかった。でも、今回は28歳の頃の自分に言い聞かせたいこと、“売れたい”と思って戦っているEMILYに対して言いたいことがメッセージとして詰まっていますね。30歳手前くらいで頑張っている人たちに対して、“28歳で人生挫折したぐらいで人生終わったような顔すんなよ”って。当時、自分も“30までに売れなかったら人生終わりだ”と思っていたので、“そんなことないよ”って言ってあげたいなと」

――いつでもやり直せるっていう……。

そう、それは今の世相も反映しているところがあって。SNSが炎上したり、週刊誌に叩かれて出てこられなくなる人たちっているじゃないですか。そういうことがあっても、“それで終わりじゃないんだ”っていう。ただ、吉本の今の現状を反映して書いたわけではないんですけど、偶然、そうとも取れるようなセリフが出てきます。吉本を再生するための映画だと思われても困るんですけどね(笑)。

――そうなんですね(笑)。撮影を始められて手応えはいかがですか?

今、東京でのパートを撮り終わったところですけど、手応えはバリバリありますね! すごいパワーみたいなものを感じますし、めちゃくちゃいいと思います。

――EMILYさんは表情にすごく力がある方ですね。

最初に本読みをやったときから“いいな”という感触はありました。演技経験はなかったらしいんですけど、MVを見たときに表情や表現からしてお芝居できそうだなと思っていて。女性は生まれたときから女優だってよく言うけど、彼女の演技からそれをひしひしと感じました。1シーン1シーンの伸び率がすごくてどんどん良くなってくるので、撮っていて面白いです。

“お客さんが大事”という気持ちが年々強くなってきた

――今回の映画は、クラウドファンディングで資金を集められていることも話題になっていますよね。

最初は、クラウドファンディングに対して懐疑的なところがありました。これまでは予算があって撮ることが当たり前でしたし。ただ、考えてみると、これまでもチケットを買ってお客さんが来てくれるわけですから、スポンサーさんとか配給会社とか吉本が(予算として)先払いしていたようなものであって、今回はその順番が逆になっているだけだなと。それから、エキストラの方々にもとても助けられていますね。昨日、ヒロインのアイドル時代のライブシーンを撮ったんですけど、エキストラで来てくれたアイドルファンの人たちのおかげで本当に映画にパワーが吹き込まれたんです。コール&レスポンスとかも周りに教えてあげたりしていてすごく協力的で。アイドルファンの人たちとこれまで接点がなかったんですけど、好きになりました(笑)。アイドルファンも、クラウドファンディングで来てくれた人も、好きなアイドルが出ているからとかEMILYが出ているからとか、理由はいろいろあると思うんですけど、どんな形であれ自分の映画を応援してくれているっていうのがありがたくて。最近、つくづく“お客さんが大事だ”って思うようになってきたんですよね。

――それは何かきっかけがあったのですか?

やっぱりライブですね。さらに、映画を撮るようにもなって、正直興行的にしんどいこともあったけど、そういうときに劇場に行って、来てくれてるお客さんの生の声を聞いたりもしたんですよ。そういうことをしているうちにだんだん意識が変わってきました。映画だと1,800円、単独ライブだと3,800円とか払ってもらっているわけじゃないですか。テレビでやっている頃は、みんながお金を払って見てくれているっていう感覚がなかったんですよ。ライブに来てくれても「俺は自分のやりたいお笑いをやるだけ」って思っていて。あとはもう売れたいっていう気持ちで必死だったので、目の前にいるお客さんへの感謝がなかったんです。お笑いをやっていると、「お客様は神様」っていうのがちょっとダサいみたいな感覚があったんですけど、今はちゃんとそういう気持ちを持てていますね。

YouTubeの品川ヒロシチャンネルでは機材にもこだわりを

――最近はYouTubeで品川ヒロシチャンネルを始められました。そのいきさつというのは?

(ロバートの)秋山(竜次)から「品川さん、ミュージックビデオ撮ってくれません?」って言われたのをきっかけに始めました。テレビでコント番組も少なくなったし、コントをショートムービー風に撮ったらどうかっていうのは前から思っていたんですね。その落としどころとしてYouTubeはぴったりかなって。予算も時間もかかるので、そんなにマメにアップはできないけど、月1本ぐらいはアップしていければいいなと思っています。

――ジャルジャルさんと組んでコントを撮影したメイキングで「すごくいいカメラで撮っている」とおっしゃっていましたね。

映画を撮るときに使うRED(レッド)というカメラを使っていますね。レンズの種類は映画ほどたくさん使えないので、“映画並み”とまでは言えないですけど。一応、こだわりを持ってやっています。

――映画っぽい映像だからこそ、笑えるなかにもちょっとゾッとするようなところがありました

僕、ホラー映画が好きなんですけど、爆笑しながら見ているときもあるんですよ。だから、“怖い”と“面白い”って紙一重なんだなって。ジャルジャルとまず組んだのも、彼らのああいうシニカルな世界観が好きだからなんですよね。あのコントっぽくないコントがいいなと思って、僕から声をかけました。あれを見たほかの芸人から“俺も撮ってほしい”って次々に声がかかって……そうなったらこっちのもんですよね(笑)。

――ちなみにどなたから依頼が?

しずるとか、はんにゃとか、シソンヌとか。ロバートと撮ったMVも評判いいんですよ。CMディレクターの人が見てくれて、会いたいって言ってくれることもあって、いろいろ裾野が広がっていますね。

50歳までに海外で映画制作が出来たら

――映像の方面でご活躍の一方、単独ライブ「愛する人への手紙~ピアノの調べに乗せて~」も9月4日(水)に開催されます。これはゲストへ向けて手紙を読むという、普通のお笑いライブとは一風異なった形態のものになっていますね。

そうなんです。単独ライブも定期的に続けていきたいですし、どうせなら何かヘンなことやりたいなって。

――今回のライブはどこから発想を得たんですか?

(キングコングの)西野(亮廣)に手紙を読むっていうライブに出させてもらって。手紙を軸にトークを展開するみたいな企画だったんですけど、僕だけA4の紙4枚ぐらいに西野に対する思いをびっしり書いて、そこに西野がバンバンうまくツッコミを入れてくれて。それが自分なりに手応えがあったんですよ。そこに生のピアノがかかっていたら、見たこともないライブになるなって思って始めました。手紙を朗読するっていうのがベースだから“そのときは知る由もなかった”みたいな手紙ならではの語り口ができるのがいいんですよね。あと、書いてしまえば覚えなくてもいいですからね(笑)

――映画監督にYouTubeにお笑いライブに、そしてオンラインサロンの開設など幅広く活動されていますが、今はご自分のやりたいことをできている状態ですか?

できていますね。テレビのペースもいいぐらいだし、好きなことができています。

――どれもストレスなく?
ストレスはありますよ、やっぱり。好きなことやるってストレスかかることだから。ストレスがない生活こそストレスっていうか……僕はストレスかかるようなことをするのが好きで、映画を作るなんてストレス以外の何ものでもないですし。ライブにしても締め切りがあって、それもストレスだし。ストレスかかるような世界に身を投じているので、そのストレスすらも楽しんでいるようなところはありますけど。

――28歳の悩んでいた頃に思い描いていた未来とはまったく違う?

違いますね。それこそダウンタウンさんみたいに、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系列)でコントやって、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系列)でフリートークをやって、『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』(フジテレビ系列)でミュージシャンと絡んで、みたいな形が理想でした。でも、思えば今映像を作って、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)とか『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系列)とかに出られて、ライブもやれて。形は違うけど、結果、やりたいことをやれているのかなって。

――映画監督としては今後、どんな方向性に進みたいですか?

「50歳までに海外で映画を撮りたいなという気持ちはあります。それに向けて今頑張っているところですね。50歳になると娘が中学生になっているんですよ。それぐらいになったらもう娘も俺のこと構ってくれないだろうし(笑)、今のうちに子どもと居られる時間は一緒に居て、50歳ぐらいになったら海外に行って勝負できたらなと。なんとなく50歳とは思っていますけど、海外の映画ってだいたい準備から公開まで5年ぐらいかかるので、50歳までにその種みたいなものを掴めたらいいなと思っています。

 

品川のエンターテインメントへの愛、そして受け手へのサービス精神が詰まった『リスタート』。観客と品川が一緒に作りあげるプロジェクトに興味がある方は、ぜひプロジェクト応援に参加してみてくださいね!

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