出典: 金井淳(イラスト)

バラエティ番組や舞台、テレビドラマなどで大活躍中のお笑いコンビ・霜降り明星のせいやが、自身の高校時代の経験をベースにした小説『奪われかけた青春をコントで取り返してみた』をラフマガで好評連載中!
今回は第4回目、突然始まったいじめは大人には見えない形でエスカレートしていきます。

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『加速しだすいじめ』

 イシカワの弁当を食べる場所探しの旅はしばらく続いていたが、ようやくひとつの安住の地が見つかった。それはプールの裏だった。この時期はまだプールの授業もないから人も来ないし、トンボの交尾を見ながら弁当を食べなくてはならないということさえ我慢すれば最高の場所だった。あと、プール独特の塩素の臭いが気になるが、イシカワはこの地を「オアシス」と名付けた。この日から弁当の時間は「オアシス」で食べるようにしたが、休憩時間の教室のいじめのレベルはどんどんエスカレートしていった。

 肩にパンチを食らう「肩パン」。これが毎回、当たり前のように行われるようになっていった。それにヘコたれていない素振りを見て、つまらないと思い出した4~5人の男グループは、4階の窓から4人でイシカワを担ぎ上げて廊下に足だけ残して体を半分以上窓から外に出す「スカイダイビング」という非常に危険な嫌がらせを敢行した。
 また、男グループ内の180センチの男がイシカワを肩車していろんなクラスの廊下中を神輿のように担いで練り歩いて楽しむ「祭り」も始まった。
 イシカワは思った。(「スカイダイビング」とか「祭り」とかいじめに通称つけるのなんなんだ。なに楽しいイベントにしてくれてんだ)。
 男子グループは新しいいじめを開発して、げらげら笑って楽しそうだった。イシカワはしょうもないことをしてくることに腹が立っていたが、こういう通称を付けたり新しいいじめを開発している主犯格が黒川という男だとだんだんわかってきた。

出典: 金井淳(イラスト)

 黒川がつくった嫌がらせの通称はまだまだある。
 ニワトリ→休憩時間に急に手にワックスを付けた男たちがイシカワの髪の毛を引っ張り上げてニワトリのようなヘアスタイルにしてくる。3時間目まで普通だった男が4時間目になるとパンクバンドを目指しているような学生に急になるので女子は笑う。
 ゾンビ→休憩時間に掃除道具が入っているロッカーに入れられて、一瞬閉じ込められる。
 ビショビショ→ノートなどが水道で洗われてビショビショの状態で戻ってくる。
 集金→3話でも話したが弁当のおかずを勝手に取られてしまう。

 イシカワはこれをすべて自分なりにいじめから、いじられているという空気になんとかもっていった。
 ゾンビ→ロッカーに閉じ込められた後、出てきた時に全力でスリラーを踊る。しかしまったくウケない。
 ビショビショ→本当に必要なノートはカバンに隠しビショビショになっていい囮のノートを何冊か用意することで回避。
 集金→これは皆さんも知っているとおり、「オアシス」で飯を食うことで回避。

 しかし「スカイダイビング」と「祭り」だけは精神が強いイシカワでもきつかった。主犯格の黒川はそんなに体は大きくないが、いじめのアイデアマンみたいなヤツで、一見みんながいじめをしていないような楽しく見えるすれすれのいやがらせを思いつくので、いちばんやっかいな知能犯的ないじめ野郎だ。アホなヤンキーみたいに顔面を殴ってくれれば、さすがに学校も動き出すのだが、こいつのやり方は巧妙に教師の目をかいくぐって、あたかも「こいつと友達ですよ」というようないじめを思いつく。
 そして側近の180センチの男。こいつが小林という黒川のゴーレムみたいなやつで頭脳が黒川、実行犯が小林というようなフォーメーションがだんだん見えてきた。周りは同調圧力で参加している感じだ。

 なるほどこれは思っていたより厄介な敵かもしれない。実はそうなのである。この世の中で起こっているいじめは、いじめている側も問題にならないように上手く周りの大人と教師の隙をついてくるので、実は根性だけではどうにもならないことなのだ。入り組んだ人間関係と頭脳戦が強いられることになる。そこが現代社会におけるいじめの複雑なところなのだ。
 でもイシカワはあきらめなかった。どうしたらこの空気をひっくり返せるのかばかりを考えていた。
 運命の文化祭まであと70日。

 
次回は9月10日(金)公開です。

霜降り明星・せいや

1992年9月13日生まれ。大阪府東大阪市出身。
2013年に相方・粗品と「霜降り明星」を結成。2018年には『M-1グランプリ』で大会最年少優勝を果たす。
舞台やバラエティ番組で活動する傍ら、ドラマ『テセウスの船』に出演するなど、幅広く活躍している。


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