2月2日(土)、神奈川・横浜市開港記念会館にてヨコハマアートラリー「アートと笑いの境界線」が開催されました。

“アートと笑いの境界線はどこにある?”をテーマにした本イベントは、その答えを求め「笑いが生まれる場」「笑いとアートが交わる場」「アートが生まれる場」の3部に分けて構成され、第1部ではジャルジャル×倉本美津留による「超コント」、第2部では「アートと笑いの境界線」と題されたトークイベント、そして第3部ではしりあがり寿氏×会田誠氏による「しゃべつくり」トーク&パフォーマンスが行われました。

ここでは、その第1部、第2部の模様をお伝えします。

ジャルジャル×倉本美津留「超コント」

まずは第1部の「超コント」。倉本氏が登場し「超コント」の流れを説明します。と同時に「クリエイティブなことは笑いに包まれていると思う」と、アートであれお笑いであれ、クリエイティブなことには笑いがつきものだと話す倉本氏。

「超コント」はシュールレアリズムにおける作品の共同制作の手法である“優美な死骸”をモチーフに行われます。具体的にいうと、お客さんから「形容詞」「名詞」をそれぞれ別のカードに書いてもらい、それをシャッフルして組み合わせ、出たお題にまつわるコントを即興でジャルジャルが演じる、というもの。倉本さんはそれを見ながら、時に即興で効果音や曲を入れることで、コントに深みを持たせたり、あるいはコントの印象を変えたりします。

ここでコントの主役・ジャルジャルが登場。普段からコントを量産し、自身の公式YouTubeチャンネルで1日1本コントを配信している彼らですが、お客さんの前で即興コントを演じるのはやはり勝手が違うよう。福徳は「打ち合わせもなんにもないんで、やることないんですよ」と、楽屋ではストレッチをしていたと話します。

さっそく最初の「超コント」がスタート。まずはジャルジャルの2人がそれぞれカードを引き、2つの単語を組み合わせた文章を3パターン作り、その中のひとつを倉本さんがチョイスした瞬間、コントがスタートします。最初のコントの候補は「野性の駅」「色とりどりのラブラブキッス」「めっちゃ強そうな大聖堂」の3つ。倉本さんが選んだのは「野性の駅」です。

即興コント「野性の駅」「いつにも増してくるぶしの神」

「あれ~、このへんに駅あるはずやねんけど……」と言いながら登場した後藤のもとに、「プシューッ!」という音を出しながら電車っぽく現れる福徳。しかしすぐに引っ込み、今度は駅っぽく登場します。後藤に「さっき電車来てましたよ」と言われ、「ホンマに!?」と驚きながら舞台袖に引っ込む福徳。電車と駅は永遠に出会えないかに思えましたが、その後福徳が電車の感じと駅の感じを交互に出してきながら登場したため、後藤は「すいません、乗せてください!」とお願いし、無事に乗り込みながら2人で去っていくというきれいな終わり方を見せます。

続いては「世界でいちばん美しい猫」「パンダのようなイス」「いつにも増してくるぶしの神」の3つの中から、「いつにも増してくるぶしの神」。福徳が靴ひもを結ぼうとするとどこからともなく「ゆるくしてえ~」と懇願する声が聞こえてきます。いぶかしむ福徳ですが、「ここか?」とくるぶしから声が聞こえている様子を察知。すると「耳当てて~」と声がしますが、くるぶしに耳を当てることは思いのほか難しく……。くるぶしの神と福徳のやりとりが爆笑を誘うコントとなりました。

ここから先も、テンポよく次々と繰り広げられる「超コント」。「奥歯ガタガタいわしたい死がい」では、福徳が「コント寄りになりましたね」という感想をこぼしたり、「未知の子煩悩」というお題では福徳が「あ~、なんか失敗したなぁ」と悔しがる場面も。すると倉本さんは「でも、そんなんも含めて面白かったですよ」とフォローします。

「ネイティブな牛若丸」というお題では、後藤が「牛・若・丸……?」と、それ誰やったっけ的な反応を示しますが、確認する間もなくコントがスタートしたため、コントに登場したのは本当の牛若丸ではなく「丸々と太った若い牛」でした(笑)。

「寝違えた育ちすぎたきゅうり」では小学生の絵日記風の朗読が織り込まれた感動(?)の物語が繰り広げられ、「3・2・1  5人目」では、ラーメン屋の行列を舞台にミュージカル風のコントが披露されるなど、即興とはいえバリエーション豊かなコントが次々と展開され、お客さんは爆笑の連続です。

最後のコントになったとき、「え、もう最後!?」と驚く後藤に倉本さんが「ジャルジャルは元気やから朝までできるもんな」と言うと、「そんなことは言うてません」と苦笑する後藤。そんな中行われた最終コントのお題は「ほうぼうで骨折」。行くところ行くところに、同じ人がいろんな箇所を骨折した状態で現れるという、文字通り「超=シュール」なコントとなりました。

「アートと笑いの境界線」トークライブ

続いては第2部のトーク「アートと笑いの境界線」。ここでは、倉本さんとジャルジャル、そしてデザイナーの千原徹也氏がトークホストとなり、さまざまな若手現代アート作家を迎え、作品を見ながらトークしていきます。

大きなコタツを囲みながら、ゆる~い雰囲気の中スタートしたトークイベント。まずは千原さんが自己紹介がてら自身の作品を紹介していきます。ジャルジャルのヌード写真集なども担当したといい、かなり過激(?)な2人のヌード写真が紹介されると、ざわつきながらも笑いが起こっていました。

最初のゲストはAKI INOMATAさん。洋服のハギレをミノムシに与え、ミノムシが作ったミノを作品にしたり、自分と飼い犬の毛を数年かけて集め、それぞれの毛を加工して自分は愛犬の毛で作った服を着て、犬はAKI INOMATAさんの毛で作った服を着ているという、動物をつかったユニークな作品を次々と紹介していきます。

続いて登場した青田真也さんは、最初に自身の作品として、なんとなくはんにゃのお面のように見える写真を紹介し、「これ、実ははんにゃのお面にやすりをかけて、表面をぼやかしてるんです」と解説します。

次に代表作である、表面を削って元がなんだったかがわかるようなわからないようなさまざまな洗剤ボトルが並んでいる写真を見せる青田さんに「なんでこんなことしようと思ったの?」と素朴な質問が。すると「存在の理由を考えるきっかけになると思って」と明かす青田さんでした。

ユニークなアート作品が続々登場!

次に登場したのは田中偉一郎さん。「子づくり表札」と名づけられた、家族(予定含む)の名前がずらずらと羅列された表札の写真でまずは度肝を抜かれるお客さんたち。他にも、民芸品で作ったロボ「だるまロボ1号」や「こけしロボ1号」、さらに「ハト命名」と題された映像作品では、次々とランダムに現れるハトにフルネームのテロップを出し、あたかも何かのドラマの出演者であるかのような演出がなされているというくだらなくも面白い、ほとんどお笑いとも言えるアート作品が次々と飛び出します。

「iPhone」ならぬ「板phone」という作品にいたっては、“ただの板”という潔さで「今日持ってくるのを忘れたんですけど、さっき崎陽軒のお弁当が出たので、そのフタで作りました」と、できたての板Phoneを披露し、笑いを誘っていました。

最後に登場したのは、LEE KAN KYOさん。台湾人アーティストであるLEEさんの作品は、一見普通のスーパーのチラシなのですが、よく見るとそのチラシはすべてLEEさんの手書きによるもので……。1枚描くのに2週間程度かかるという話を聞いた倉本さんは「何してるんですか!」と思わずツッコみます。また、コンビニで買える雑誌も「楽しそう」だと感じたLEEさんは、最初は雑誌の表紙を模写していたのですが、そのうちコンビニの棚ごと描き始めてしまい……。ツッコミどころ満載のLEEさんの作品を「すごいなぁ~」と見つめるジャルジャルの2人でした。

全員集合したところで、福徳が「『なんでこんな作品を作ったんですか?』って、作家さんには聞かないほうがいいんですか?」とたずねると、「作家は作品を言語化するのがヘタな人が多いんですよね」と田中さん。すると青田さんが「逆にジャルジャルさんが『なんでこんなネタ作ったんですか?』って聞かれたらどうですか?」と質問します。すると福徳は「それは困りますね」と答えていました。

後藤は「僕らはネタに完成がないんですけど、アーティストの方は作品に完成はあるんですか?」と質問。すると「それは一緒かもしれない」と、自身の作品には完成がないことを明かすAKI INOMATAさん。しかしLEEさんは「締め切りがあると終わります」と、自身の作品には締め切りとともに完成が訪れると話します。

それを聞いた千原さんは、「みなさんの答えがバラバラで面白いですね。広告だと、“ひとつの気持ちになってもらいたい”と思って作ってるんで、そこが(現代アートとは)真逆で面白かったです」と、デザイナーの立場から現代アートの面白さを語っていました。

アートと笑いの境界線はどこにあるのか、そもそもアートと笑いに境界線はあるのか。見にきたお客さんがそれぞれ考えることのできたアートイベントとなりました。