これは僕が1人の女性に3回嘔吐させられた時の物語である。

小学2年生の時、いつも通学路にいわゆる緑のおばさんがいた。
通学路に立ち、旗を持って子供たちを見送ってくれる緑のシャカシャカを着たおじさんとおばさんである。

町内会でその役割を回しているそうで、日替わりで、決しておじさんおばさんと言うには憚られるほどのおじいちゃんおばあちゃんがおじさんおばさんとして立っていた。

その中で、一際僕の気を引く緑のおばさんがいたのである。

なぜ気を引かれたのかと言うと、その緑のおばさんは、黄色いのだ。
緑のシャカシャカを羽織ってはいるものの、中の服も、靴も、髪も、歯も、そしてそれ以上に存在感が黄色いのだ。
オーラが見えているとかそういう類いの話ではない。存在感がなんか黄色いのだ。

そして、その黄色い緑のおばさんは、一際若かった。
といっても20代とかではなく、他の緑のおばさんが60代以上が殆どの中、その黄色い緑のおばさんは、おそらく30代中盤だった。
若くて黄色い、若黄色い緑のおばさんは、毎週金曜日になると通学路に立っていた。
今思うと、金曜日もなんか黄色い。

その若黄色の緑のおばさんの「いってらっしゃい」が、また甲高いのだ。
声が鼓膜を通り、鼓膜の近くの脳味噌を少しこそばしてくるような甲高さであった。
これもまた色で言うと黄色っぽい。カミナリのマークのようなイメージである。
そのおばさんを見るたびに僕は想像した。
好きなポケモンはピカチュウなのかな? レモン味のものを好んで食べるのかな? 信号が黄色だと、止まるのか進むのかどっちなのかな?
そんなことを思うだけで、一度も会話を交わしたことがなかった。

そんなある日、僕はいつもお母さんが見てる朝のニュースをなんの気無しに見ていると、占いのコーナーが始まり、僕の今日のラッキーカラーが黄色だと言うのだ。
見た瞬間は、そうなんだ、と言う程度にしか思っていなかったのだが、家を出て少し歩いた時に、今日若黄色い緑のおばさんに声をかけてみようとふと決心がついた。
自分で決心したくせに、なぜかどんどん重たくなる足取り。
じゃあ声をかけなければいいだけなのだが、なぜかそこは揺るがない。自分で決めたことに勝手に自分が縛られている。
僕は声をかけることと同じくらいその状況にも気が重くなりながら、気がつくと、若黄色い緑のおばさんが立っている交差点にいた。
ちょうど信号が赤になったので、僕は意を決して聞いた。

「おばさん、好きなポケモンはなんですか?」
「うーん、オーキド博士かなぁ」

僕はパニックになった。
色んな衝撃で心臓はバクバクし、おばさんに返事をする余裕はなく、信号が青に変わった瞬間交差点をダッシュした。
後ろから、「いってらっしゃい」と甲高い声が飛んでくる。
今日は脳を越えて心臓まで揺らされる。

僕はなんとか学校に着いたが、校門で嘔吐し、そのまま保健室で半日寝込み、早退した。
黄色がラッキーカラーのはずなのに。

そして一週間後、また若黄色い緑のおばさんと出会う日を迎えた。
怖いもの見たさのような感覚でまた朝の占いを見てしまった。お猿さんのキャラクターが、僕のラッキカラーを教えてくれた。
なんと、「若黄色」だった。

このコラムを書くにあたって調べてみたのだが、そんな色はこの世に無い。
ただ、その日、その朝のニュースではこの世にないはずの色が、あったのだ。
「あなたのラッキーカラーは、若黄色だっキー!」猿が叫んだのだ。

僕は速くなる動悸を抑えるように、学校へ行く準備をした。若黄色い緑のおばさんに会いたくないのに。
心臓の鼓動から意識を逸らすには、動くしかなかったのだ。

気がつくと、あの交差点だった。そしてさらに気がつくと、「おばさん」と声をかけていた。
「ん?」と僕を覗き込む若黄色い緑のおばさん。
こうなったらもう話すしかない。
少し間をおいた後、「レモンは好きですか?」と声を振り絞って聞いた。レモンだけに。

するとおばさんはまるで質問されることを知っていたくらい間髪入れずに「季節によるわね」と答えた。

僕は今度はその場で嘔吐した。

そこからの記憶はなく、気がつくと家で寝ていた。ラッキーカラーは若黄色のはずだったのに。

次の日の土曜日、その次の日の日曜日も一日中ぼーっとして過ごした。
何かをする気力が起きなかった。そして迎えた月曜日。
若黄色い緑のおばさんがいないとわかっている日は、嘘のように簡単に学校に向かえた。
しかし段々と近づいてくる金曜日。
日に日に不安感が募り、木曜日、学校から帰ってくるとすぐに寝込んだ。

そして目覚めた金曜日。
朝のニュースをなぜかまた見てしまう。見たくないのに見てしまう。猿が出てくる。そして僕のラッキーカラーの発表だ。

「ラッキーカラーは緑だっキー!」

意外とそれを聞いても僕はなんとも思わなかった。
今日は若黄色い緑のおばさんがいる交差点を通らずに、迂回することを決めていたからだ。
自分が何も思わなかったことがなぜか自信になり、急に前向きになった。

僕は急いで支度をし、家を飛び出した。目の前に若黄色い緑のおばさんがいた。

僕は嘔吐し、家に戻った。



【関連記事】
【写真】なかやまきんに君への違和感の正体
【暴露】パンサー向井が「ロケ弁を食べない理由」
【衝撃】ミルクボーイ内海の“角刈りじゃない”過去の姿
【驚愕】ですよ。の意外な“前職”
【話題】尼神インター誠子「カップル写真」のお相手
【独占】結婚生活18年「僕はラッキーなんです」