「LAUGH & PEACE ART GALLERY」(大阪市中央区)で絶賛開催中の『吉本新喜劇 吉田ヒロ展』。その会場に3月15日(月)、現代美術家の浜崎健氏が訪れ、吉田ヒロと対談しました。同じ1967年生まれということもあり、初対面にもかかわらずトークは終始、和やかな雰囲気で、自身の原点や、アート・表現とは何かについて語り合いました。

浜崎健氏は、大阪を中心に活動する現代美術家です。大阪・南船場で自らの美術館「浜崎健立現代美術館」を主宰し、「飛ぶ」「寝る」「座る」の3つのテーマをアートワークとして、日本のみならず世界で活躍。いつも全身真っ赤な服に身に包み、アートパフォーマンスを行っていることから“赤い人”としても知られています。

浜崎がいちばん気になった作品は?

浜崎 なにも情報を入れずに来たので、パッと見たときに「グループ展なのかな?」って思いました。それくらい作風がいろいろある。だから、ヒロさんが描いているものもあるけど、ヒロさんがいろんな面白い人を集めた展覧会なのかなと思いました。

吉田 アート仲間4人とのユニット「チーム麦水」で作っている(作品もある)ので、作品がそれぞれ違うというのはありますね。名古屋に住む造形作家さんが天板を作って、それを東京の鈴木つかさ(元ザ・プラン9)のもとへ送ってもらって。その天板に鈴木がスプレーアートを描いたら大阪に送ってもらい、さらに俺が、スプレーアートを見てイメージを膨らませて(絵を)描いてます。

それと、俺自身が同じことをしたくないタイプで、新喜劇でも1回目と2回目の舞台ではギャグを必ず変えるんです。絵でも、画風を変えたりしています。

浜崎 かなりバリエーション豊かですよね。いちばん気になったのは時計の「3」。人みたいになってる。パッと見て気になりました。数字で“ヒロさんフォント”というのを作ったらいいじゃないですか。

吉田 このテイストでアルファベットは作ったんですけどね。

“赤い人”になった意外な理由

浜崎 僕はヒロさんをテレビで見たことはありますが、会うのは初めてですね。アートを手がけてらっしゃるというのも、今日初めて知りました。

吉田 今日、「“赤い人”が来る」と聞いて、じゃあ俺も……と思ったけど、「俺が赤にしたらまずい、カズレーザーとカブる!」と思って(笑)。結局、黒(い服)で来ました。それにしても、ほんまに赤いんやね(笑)。

浜崎 僕、「赤い人」とよく言われるんですが、赤が好きなだけで目立ちたいわけでもなく、ただ“赤いものに守られておきたい”んです。お母さんの子宮の中、みたいな感じで。

吉田 なにを言うてるの?(笑)

浜崎 赤について質問されると、「赤が好きやから」としか答えられてなかったんですが、あまりにも聞かれるので、ちゃんと答えたいと思って。それに僕、アカレンジャー(1970年代の特撮ヒーロー「秘密戦隊ゴレンジャー」のリーダー)が好きやったし。僕らの若いころって、デザイナーズブランドブームで、黒い服ばかりやった時代じゃないですか。僕も雑誌で読んで、黒い服ばかり買ってて。

吉田 うん、流行ってた。

浜崎 僕、なにかをするとき、小さいころの記憶をすごく大事にしているんですけど、ある日、「小さいとき、あんなに『ゴレンジャー』が好きで、アカレンジャーになりたかったのに」と。

黒って「ショッカー」(仮面ライダーシリーズに登場する悪の組織)の色じゃないですか。悪者の格好をしてるなんておかしい。よく考えたら、本当に自分が好きなんじゃなくて、いま黒が流行ってるから黒を着ているだけ。それなら、もっと好きなことをしたほうがラクやな。それなら赤にしよう、というふうに思いました。

舞台女優の母の「ドーランのにおい」

浜崎 ヒロさんのお母さんを描いた作品もありましたが、舞台役者さんだったんですね。やっぱり影響を受けたんですか?

吉田 でも、反面教師ですよ。ずっと家にドーランがあって、においがプーンとするし、着物とか扇子とか三度笠とか、家が潰れるんちゃうかっていうくらい置いてあったんです。

浜崎 そんな環境、うらやましいですけどね。

吉田 だから新喜劇に入ったときに、ドーランのにおいがして「うわ、実家のにおい!」ってなって。

浜崎 お母さんは喜んでるのでは。同じ舞台の仕事で。

吉田 そこはやっぱりね。母の見よう見まねで「三度笠」をやったりしてましたね。小学生のときも、段の上に立って同級生に「お前ら、俺がいまから面白いことするから見とけよ!」ってやってました。

「一生できる何かをやりたい」

浜崎 僕も両親と兄弟の影響が大きいです。特に4番目の兄貴はマンガが好きで、家にマンガがいっぱいあったんですよ。あと、いま振り返ると、母が抽象的な絵を描いて、その絵に僕が書き足して牛にしたり……という遊びをよく2人でしてたんです。母にも芸術的な感覚があったのかな、と思いますね。

父はテニスをやっていたので、その影響でスポーツ少年やったんですよ。でも高校を卒業したとき、「スポーツは体力のピークがあるし、僕は一生できる何かをやりたいな」と考えた。そういえば小さいころ、作品を作るのが好きやったし、あとロンドンが好きでね。音楽もファッションも。それでロンドンに行くんです。

それまでは僕、田舎もんやし、テレビや雑誌に出ている人らがすごい人に思えていたんですけど、ロンドンに行って色んな人に会うと、「あれ? 僕とぜんぜん変わらないやん」というのがわかって、すごくラクになれたんです。

それに日本を離れて、改めて日本のよさを知る機会にもなったし。それからですね、「自分も作品をつくろう」みたいな。

吉田 俺が絵を描き始めたきっかけは、小学生のころに、図工で絵を描いたら神社に貼られたり、友だちに頼まれて生徒手帳に「タイガーマスク」や「仮面ライダー」の絵を描いたり。そのうち似顔絵も得意になりました。

15歳でこの世界に入ってからも、「バンドのアルバムデザインをしてほしい」と頼まれたり、MBSで中継されている『よしもと新喜劇』のオープニングCGの原画を描いたり。俺が絵を描いたグッズも販売され、夕刊紙の連載もあって……。

だんだん絵の仕事が多くなりすぎて、締め切り、締め切りの連続で。「もう勘弁してほしい」となって、一時期、描くのをやめたんです。

浜崎 いつごろの話なんですか?

吉田 新喜劇の座長やってたころやから、20年くらい前かなあ。でも今回、コロナ禍でずっと家にいて、リモート飲み会をするようになり、そのときに造形作家の方が(作品を作ろうと)声をかけてくれたんです。

真っ赤な飛行機に住みたい

浜崎 僕は小学生のころ、(人気マンガの)「サーキットの狼」が特に好きで、(マネして)自分で描いて。あと、「ドカベン」もよく描いてましたよ。色紙に「ドカベン」の表紙の絵を描いて、友だちの誕生日プレゼントにあげるんです。ちゃんと色紙をラップで包んで。

吉田 そういうの、俺もしてましたわ。だから、これまで描いた作品って手元にないんです。全部プレゼントしてるから。

浜崎 誰かのために描くからですね。僕は自分のため。自分が楽しいから描く、という。僕は怠け者なので、毎日寝ながら描いてます。

吉田 それ見た、見た!

浜崎 あと、僕にとっては飛行機の中がアトリエで、フライト中に作品を描くということもやってます。僕、飛行機が大好きなんでね。ゆくゆくは真っ赤な飛行機に住みたい。楽しくないですか?

吉田 俺、高所恐怖症やねん……(笑)。

浜崎 好きなことをしたい、ということなんですよね。旅行が好きやから、飛行機に乗って絵を描いて旅する。旅行って行ってからのことを言うんでしょうけど、僕は行ったら何もしないです。

いまは海外に飛べないので、沖縄に飛んでます。距離が長くないと描けないので、大阪からトランジット(乗り継ぎ)でわざわざ一度、東京に飛ぶ。沖縄に着いてもどこにも行かず、ホテルにいます。

吉田 もったいないなぁ。

浜崎 もったいなくないですよ。僕にとっては飛行機がアトリエなので。宇宙にいちばん近いアトリエを持つ男なので(笑)。

「苦労」だと思うことは向いていない

浜崎 楽しくないと意味がないと思いますね。楽しく作っていないと。苦労してとか、努力してとか、いろんな人がいると思うんですが……。

吉田 それはそうやな。俺らも若手のころからみんなとやってきて、苦労やと思ったことはないもん。

浜崎 たぶん苦労って、人から言われることで、自分で言うことではないと思うんです。自分で苦労と言ってしまうことは、ほんまは向いていないんじゃないかと思うんですよね。

吉田 同じこと思ってるわ。健ちゃんが言う通り。やっぱり楽しまないことにはね。舞台でもそう。お客さんを笑わせるなら、やっている俺らが楽しまないと伝わらない。

浜崎 それって実は、すべてそうだと思うんですよ。

吉田 絵を描くのも、“いま”が楽しいもんね。締め切りに追われていたときは楽しくなかったから、やめたんよ。

浜崎 アートに限らず、料理も「好きやから」という人が作って、相手に「おいしい」と言われたら、「じゃあ、もうちょっとやろうかな」ってね。楽しくやって、たくさん喜んでもらえたら、やっぱりうれしい。人間って、そうちゃうかなと思うんですよ。

個展概要

『吉本新喜劇 吉田ヒロ展』
開催日時:3月4日(木)~21日(日) 13:00~18:00(最終入場は閉店30分前まで) ※火・水曜定休
会場:LAUGH & PEACE ART GALLERY OSAKA
入場:無料

注意事項

  • 新型コロナ感染対策のため、一度にギャラリー内に滞在できる人数は10名様までとし、混雑時には待機いただくなど入場制限を取った上での開催といたします。
  • ご来場いただく際はマスク着用をお願いしております。マスクを着用していないお客様や、37.5℃以上の発熱や体調不良の場合はご入場をお断りさせていただきます。また、スタッフにマスク着用を義務づけて対応させていただいております。
  • 入場は閉店時刻30分前までとさせていただきます。
  • 入口に大きな段差があるため、車椅子でのご入場はできません。予めご了承下さい。


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