ケータイよしもとで連載していた人気コラム、『ゆにばーす川瀬名人の認定戯言』がラフマガで復活。惜しまれながら今回最終回となります。
川瀬名人の「戯言」にお付き合いください。

関連記事:川瀬名人が『M-1』、『ゆにばーす』を語る…「ラフマガ」コラム連載記念インタビュー
12月20日寒空の下、川瀬の情緒は揺らいでいた。【ゆにばーす川瀬名人の認定戯言#11】

 

タイトル『知らなくていいこともある』

恋しい布団を抜け出し歯を磨こうと自分の部屋を出ると同居人が玄関でいそいそと出発の準備をしていた。

「バイトか?」

深夜のすた丼屋でバイトしているのは川瀬も知ってはいるが、
(いや昼のヘルプまで入ってないから!!)
のツッコミ待ちの芸人同士のルームシェアの何気ない会話のやり取りだった。

「いや、
PCR検査。
行ってきまーす」

待て待て待て待て待て。
え? は? PCR検査??

「うん、なんかさっき腹痛いから病院行ったら軽い胃腸炎らしくて一応検査で受けてって言われたから。行ってきまーす。」

これは落ち着いて対処しなければならない。

今、皆さんがご存知の通りコロナ第三波の真っ只中。
感染者も増えてる中でここの判断は非常に難しい。

これには少し事情があった。

遡ること2日。
川瀬は急に鯖鮨が食べたくなったのでデパ地下で最高級のトロ鯖鮨なるものを購入。
帰宅後、同居人2人と3人で旨さに感動しながら秒で完食。
そこから3時間後、同居人Aが便所で嘔吐。漂う鯖の匂い。間違いなく当たった。
さらに下痢と嘔吐を繰り返し病院へ。完全に鯖による胃腸炎と診断される。医者に自らPCR検査を打診するも、いや完全に胃腸炎なので行かないでくださいと言われる。

そこから1日遅れるように同居人Bが発症。全く同じ症状だったがこちらは比較的弱め。腹が痛いと言いながら何故か病院にも行かず冷えピタを張ってアニメを見ていることからも軽症のようであった。

何故か川瀬は発症せず。普段高級なものを食べているプラス、ホームレス時代の免疫か鯖ではビクともしないようであった。

ここまでの経緯から見て……

いや絶対、陰性やろ!!!
これで陽性やったらもう全国民陽性やろ!!!

その時ふと思い出したことがあった。

バブル景気真っ只中だった時の話しである。

当時、三階建ての10LDKくらいの家に住んでいた僕は、小学生なので9時にはスヤスヤしていた。

100%の羽毛布団でスヤスヤしていると、夜中にゴニョゴニョと話し声が聞こえてきた。

小学生にとって真っ暗な空間のどこからか話し声が聞こえてくる、というような状況はただただ恐怖でしかなかった。

オバケかとも思ったが
オバケにしては声がやたらと明瞭であった。

オバケの声によくよく耳を澄ましてみる。

「……たらいい?」

完全には聞き取れないが
女性の声である。

「……たらいいやないの?」

別の女性の声もする。

というかどちらも聞き覚えがある。
姉とおばあちゃんだ。

僕には6つ上の姉と8つ上の姉と56つ上の祖母がいる。

当時、一番上の姉が17歳。
声の主はこちらの姉のようだった。

「……たらいい?」

かすかに聞こえるものの、イマイチ聞き取れない上にヒソヒソ話し感がすごい。

一体全体、何が、たらいいのか?

魚か? 魚を選んでいるのか?
鯛よりは……ということなのか?

その声はどうやら自分の部屋の扉の向こうから聞こえる。

そっと、声にまぎれるようにドアノブを回し廊下に出る。

僕の部屋は突き当たりで、そこから廊下が続くのだが、途中に三部屋あり、その三部屋目と階段にトイレがある。

どうやら話し声はその付近だ。

三階建てといっても構造的には
2F
1F
B1F
という作りなので地下に関してはほぼ光は差さない。にも関わらずどういった理由かB1Fのトイレは壁紙が ピンク蒲田ピンク くらいピンクで、おかげさまでトイレだけ電気が付いていると自宅に風俗店でも設置したかのようなやたらと卑猥な光が漏れ出す。

その光に照らされるように姉と祖母がしゃべっている。というか、姉は泣いている。

廊下に出ると明瞭に聞こえた。

「どうしたらええんやろ……これ
なあ……おばあちゃん、これどうしたらええ……」

祖母が優しい声でなぐさめる。

「落ち着き。とりあえず落ち着きぃ。
大丈夫、泣かんでもええ……」

どういうことだ。
当時の僕では思いもよらないが、妊娠してしまったかくらいの会話ではあった。

「こんなんどうしようもない……どうしたらええかわからん!!」

もう、ボソボソではなく半分叫び声である。他の家族は二階で寝ているためさすがに気づかないくらいの声量ではあるが。

「おばあちゃんがどうにかするから……」

よくよく見ると姉の鼻から下が真っ赤になっていた。

血だった。

かなりの量でアゴから滴り落ちようとしているのを姉が泣きながら手で食い止めている。

もうこれはあれだ。
これは事件だ。

小学四年生に何ができるとも思わないが姉の一大事だ。

恐怖を興味が超えて、興味に正義感が勝った。

「どうしたん!?」

と、今気付いたかのように駆けつけると

「こっちくんな! いいから! 寝とけ!」

??
ブチ切れられた。

「いや、なんで? なんで泣いてんのよ」

「いいから! あんたは寝とけ!!」

「はあ!??」

「寝とけていうてるやろ!!」

もうわけがわからなかったが、売り言葉に買い言葉。

僕は小学四年生の知識を総動員し、推理して導き出した回答がうっすらとあった。

しかしこれは子供ながらに言ってはいけないという認識も同時にあったが、そんなものは関係ない。

7歳上の姉に口喧嘩で勝つなら、
もうこの刀を抜くしかなかった。

「どうせ……

生理やろ!!!!!!」

10LDKに響き渡る禁断呪文。
バルスくらいの威力はこちらも期待していた。

が。

「そんなもんちゃうわ!!!!」

そんなもん!?!??
バァカな!???

そんなはずはない!!
生理という単語は女性との口喧嘩において圧倒的な威力があるはず……

己の抜いた刀を見事にへし折られ、二の句も出ない僕に姉はたたみかける。

「だいたい先週で終わったしな!!」

先週で、終わった!?
終わるもんなん!?

なんなん!? 先週!?
そんな少年ジャンプの人気ない漫画みたいなことがあるのか!?
生理と未来永劫毎日毎秒戦うのが女性ではないのか!?
まだまだ僕は生理の知識が甘かった。

奥深いぜ……生理……

じゃないよ!!
じゃあ一体全体何があったというのだ!?

「だからあんたは関係ないから寝とき!!」

あくまで僕をこの場から去らせようとする姉。
祖母が空気を読んだのか間に入ってこう言った。

「そうそう、拓郎(本名:川瀬拓郎)はもう寝とき。な、ここはおばあちゃんがやるから大丈夫。」

祖母の目に姉を心配する弟は美しくうつったのかもしれない。
が、結論から言えばそれがよくなかった。

「心配せんでもお姉ちゃん病気とかちゃうから。

うんこ、つまらせて流れへんだけやから。」

姉は叫んだ。

「血も気張りすぎて鼻の血管切れて鼻血出てもうただけやから。拓郎は心配せんでも大丈夫……」

祖母は
たたみかけた。

そして姉は初号機覚醒の時みたいな鳴き声で泣いた。
僕は女性にとって生理より恥ずかしいことがこの世にあるのだと知った。

そんな二人の兄妹をうんこだけに尻目に

「ほら、だいぶ、ふやけてきたで。言うたやん、硬いのが出たから流す時にバラけへんから流れへんだけやって。ほらほら、拓郎みてみ。」

見れるはずもない。

「後はな、おばあちゃんが割り箸でもうちょいバラして流したら大丈夫やから。
な、拓郎、だからあんたは寝とき。」

姉は生理陰性だった。
検査の結果、陰性でウンコだった。
陽性よりやばかった。

同居人をPCR検査に行かせた。
結果が出た。
陰性だった。

え? 俺なんでこの話思い出したん?

と信じられないくらいオチが雑になってきたことからもわかる通り、もう限界です。

今回で最終回とさせて頂きます。
今までありがとうございました。

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