ケータイよしもとで連載していた人気コラム、『ゆにばーす川瀬名人の認定戯言』がラフマガで復活しました。
川瀬名人の「戯言」にお付き合いください。

関連記事:川瀬名人が『M-1』、『ゆにばーす』を語る…「ラフマガ」コラム連載記念インタビュー
今回のコラムはコント形式でお送りします。【ゆにばーす川瀬名人の認定戯言#10】

 

タイトル『墓の下のM-1』

気温は5度だった。

「……エントリーナンバー3182、インディアンス!!!!!」

響き渡る無情なるおもしろMCの声。
幾度となく己に言い聞かせたではないか。

期待はするなと。

ここ2年負け続けた川瀬にとって今年のテーマは【耐ショック姿勢】だった。

その人が好きであればあるほど、さらにその人が何となく自分のことを好きなんじゃないかと感じれば感じるほど、振られた時のショックはデカい。
こういう時に人はどういう態度を取るのか。
「別に~、おれ、あいつのこと好きとかじゃねーし…」
そう、諦めたフリをすることで己の身を近い未来に来るであろう精神の壊滅的打撃から無意識に防御しているのだ。

このことは同期扱いのダイタクから学んだ。
一度、ダイとタクに挟まれてパチンコを打った事がある。
右の台に、じゃなくて右の台で打っているダイに赤保留(信頼度30%)がきたので思わず声をかけた。

「いや、ダイさん、めっちゃ熱いじゃないですかこれ」

すると缶コーヒーをすすって台の方を見ながら

「…あ? そうか? そんなだろ」

左の台に座っているタクも続く。

「あのな、川瀬、俺たちが何年パチンコ打ってると思ってんだよ??」

努めて冷静に振る舞うこの双子に宵越しの金はない。
更にそこから激アツリーチに発展、画面は激しく点滅し出して誰がどう見ても当たりそうな雰囲気である。

「いや、これ!! これはあたるでしょ絶対!!!」

ダイが缶コーヒーを静かに置く。

「うるさいって、あたんねえって」

タクは最早自分の台も見ていない。

「あのな、俺たちが何回赤保留で外したと思ってんだよ??」

2人とも目がもう笑ってない。
文言内容と口調がまるで裏腹である。

そんな中、台のレバーが上昇し「レバーを引け!!」の文字が踊った(信頼度は90%)瞬間、両側から大声が飛んだ。

「「引けっ!!!」」

ダイタクの息がこんなにあってるのは漫才でも見たことがなかった。

が、パチンコはそんなに甘くない。
残りの10%を見事に引いた。
そして2人はまた声を揃えてこう言った。

「「な、外れたろ??」」

カッコ悪すぎて最早かっこいい。
この時、川瀬の中でダイタクさんからダイタクと呼ぶことが決まった。

ただこの一連の行為は確かにカッコ悪いかも知れないが学ぶ点もあった。
考えようによってはパチンコの勝ちに期待し続けた男たちが自己防衛本能で編み出した、外れた時のために成功を期待しないという耐ショック姿勢方法だったのだ。

時は再び戻って2020年12月20日、M-1グランプリ敗者復活戦。

川瀬としては決勝には本当に行きたかった。
ただ冷静に考えれば考えるほどいける確率は著しく低かった。

まず敗者復活は視聴者投票。
現場に見にくるお客さんには爆裂ウケる自信はあったが、普段お笑いはM-1しか見ない茶の間に向けて爆裂ウケる自信が爆裂なかった。

基本的に普段お笑いを見ないテレビ視聴者の人は笑いを点で見る。
流れが綺麗とかより一つ一つのボケにキチンと振りがあった方が非常に見やすい。
爆笑問題さんの漫才はそのためにわざと箇条書きのような作りになっていると聞いたことがある。

その点で言えば我々の今回のネタは完全に4分意識を集中してもらわないととてもウケない。
加えてテーマ的にも全世代に響くかというと自信はない。

作戦として球数がある漫才師は敗者復活戦に普段初見相手に寄席でやってる漫才を選択するというのは一つの選択肢である。
スーパーマラドーナさん、プラス・マイナスさん、ミキさん、更に今回のインディアンスさん、作戦の結果は言わずもがなである。

が、負けることに臆病になっている川瀬は
ここでまず一つ、【耐ショック姿勢】を取ることを選ぶ。

寄席のネタをやって勝ちに徹した時に負けた時のショックがとても怖かった。

今年の勝負ネタで勝負すると言えば聞こえがいいが逆に言えば言い訳は立つ。
そのくせ自分が一番自信のあった準決勝のネタではなく、ウケが良かった準々決勝のネタをやるというどちらにも徹底できてない根性の無さ。

しかし仕方ない、負けた時の精神が壊滅しないためなのだから。

そして出番が来た。

ウケた。鬼ウケた。客が最後スタンディングするかと思った。
が、それでも緩めぬ【耐ショック姿勢】。

ウケたからなんだと言うのだ。
プラス・マイナスさんも2018年あれだけウケていかなかったのだ。

この敗者復活戦はその場のウケではない、その1年の芸人の活躍も込み込みの場。自らテレビに出なかった自分がなんの文句も言えるはずはない。

コウテイの九条はあまりの手応えに帰ってきた後、ガッツポーズを連発。
若いな、九条。

川瀬は冷静にキッチリとシートベルトを締め直した。
そして最終組まで終了。

エゴサの結果は良好。
視聴者の平均点は89.2点。
なかなかの高得点。
しかしシートベルトは緩めない。

いよいよ視聴者投票が開始された。
ドキドキはしない。
何故なら我々は負けるのだから。

ここで更なる【耐ショック姿勢】悟り、を発動。

俺はやり切ったと自らを暗示にかけて、負けても悔いはないという、絶対そんなことはないメンタルにもっていく。

どんどん暫定の順位が発表されていく。

4位学天即さんが呼ばれた時点で
我々が上位3組に残ったことが確定した。

川瀬は緩まない。

ぺこぱさんの知名度を考えろ。
川瀬がチョコっとドブ板選挙活動やったところで「モニタリング」の出演一発でご破算だ。
しかも昨年の3位。その辺の人気だけの奴とは苦労も地肩も違う。

インディアンスを見たか。
「お待たせしました木﨑です」で揺れる会場、感動する茶の間を。
あんな心遣い抜群の掴みができる人柄の人に街宣車で走り回った奴が勝てるわけない。

まあまあ多分3位くらいやろう。
それでも十分、ガッツリしたネタでこれほどの評価が頂ければ本望や。
発表の時には圧倒的大差が待っているだろう。

そう言い聞かせ楽屋に戻り、自分の中のM-1グランプリ2020を閉幕させようとした時だった。

「名人、見た? さっきの画面」

ここでは名誉のため名前を伏せさせて頂き、仮にロンリネスさんとさせて頂く。
ロンリネスさんが川瀬の肩を掴んでそう言った。

「え?? なんすか、さっきの画面て」
「え?? 見てないの??」
「いや、見てないというかなんのことかも…」
「うわ…じゃあ言わない方がいいか…」
「いやいや、聞かせてくださいよ!!」
「いや、さっきね、暫定上位3組が出たじゃん、その時に一瞬客席モニターの画面にさ、小さい文字出た画面出なかった??」
「え??」
「うわ、マジ見てないの」
「いや、でも言われたらなんか一瞬意味わからん画面の時あったような」
「お客さんもみんなおれらの方向いてたから気づいてなかったけど、あれ上位の順位と票数でちゃってたよ」
「え???????? マジっすか!!?!?」
「どうする、ここから先、聞く??」

聞くに決まってるというか、え?なにこれどういうこと??
はらさんに聞いても見てなかったが確かにそんな画面にはなった気がする的なことをいう。

マネージャーを一瞥すると目があった瞬間そそくさと逃げ出した。
これはどう判断す…

「ゆにばーす、行きましたよ!!」

これまた名前は伏せるがロンリネスの親友が人の思考に割って入ってきた。
戸惑う川瀬。

「え?」

ロンリネスが馬鹿お前みたいな顔した後

「いや、ゆにばーす1位だったよ、俺らとは結構離れてた、いけるよこれ」

川瀬はシートベルトを引きちぎった。

「マジで!!!!?!??」
「いや、マジでマジで」
「嘘やったらマジ許しませんよ」
「いや、こんな嘘つかないでしょ!! とにかくネタ合わせした方がいいよ」

耐ショック姿勢なんてとってる場合ではなくなった。
他の人に聞いて回るもそう言った情報が多数。

期待ではない、ほぼ確定。
鏡を見るとここまで我慢していた勝利への感情が顔から吹きこぼれていた。

無論、こう言ったことも想定していなかった訳ではない。
二本目も、直前で差し替えるやもしれぬ三本目まで用意はしてきていた。

とりあえず、ネタ合わせを
「川瀬、あっちでやろう」
はらさんは既に決勝いってる顔をしていた。

そこから1時間半の猛稽古。
単独ライブあんのかくらいやった。

そしてやってきた敗者復活上位3組の最終投票結果。

いける。ついにいける。

2年越しのリベンジだ。緊張も程よい。

上戸彩さんが苦い顔して笑みくじを引く。
表情から敗者復活の会場全員が悟った。
トップバッターは敗者復活だと。

トップ。
それでも構わない。今回は跳ね返せる自信がある。
更にトップ2回目なことも合わせて審査員もウケさえすれば点は低くつけることはないだろう。
トップも想定したネタを作ったつもりだ。

上戸彩さんから
「トップバッターは…敗者復活枠です!!」

確定。

そして敗者復活枠の名が今田さんから読み上げられる。

さあ、行こう。見とけよニューヨーク。
殺してやる。殺してやるぞ。

「エントリーナンバー……」

えみちゃんマジ待っててねだ。

「3182、インディアンス!!!!」

気温は5度だった。

固く結んだシートベルトはもうない。
人生最大級の衝撃にカメラで死ぬほど抜かれた祝福ムード。
なんとか地に足をつけ、インディアンスを送り出し楽屋に帰る。

ダイタクはもう私服に着替えていた。
こっちを見つめる目線はこう語っていた。

(な、外れたろ??)

そそくさと帰るロンリネスの背中を睨みつけながら、なんだったんだあの意味不明な画面の話はと首根っこ引っ張って言いたかったけど、シートベルトしてのチャレンジなんかしても意味ないってことを教えてくれたと思えば

悪くないだろう。

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